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【086】大きいだけでは良い施設にはなれない

管理人のBLOG, 計画業務のツボ, (中国でよくある)ゲストが逃げる危険信号

この話は主に中国のレジャー施設建設計画でよくある話です。個人で会う中国人とても親切でうがったところがない人も多いのですが会社人としての発言や行動を見るとプライドが高い(高すぎる)と感じることが多々あります。とにかく(自分の)会社はナンバー1であり、同業他社に比べて“こんなにすごいんだぞ”という話をよくされます。

特に計画の段階でよく聞かれるこの手の話で多いのが

「自分たちの施設は中国で一番大きい(アイテムがある)」

という話。

サービスや価格面などソフトに関する話ではなくてハード面での巨大さをアピールすることがよくあります。日本でこうした話をアピールすることはバブル時期まではよくありましたが最近はほとんど聞かなくなりました。むしろ「これだけ小さい中にこんなに盛り込みました」というコンパクトに凝縮したという話が多くなった気がします。話もデフレ化するってことでしょうかね?

日本で一番成功しているテーマパークである東京ディズニーリゾートは確かに巨大な敷地を持っています。100万人集客レベルの遊園地が30ヘクタール程度のところが多いですが、TDLやTDSはその倍近くの面積があります。でもハウステンボスのようにTDRよりもさらに大きな敷地を持っている施設もあり、一番大きいわけではありません。こういう話をすると「中国は大きいことが大事なんです」と大抵言われます。しかしこれは事業者や行政側の視点での考え方です。

世界一大きな●×を目指して同じゲストが何度も来ることはありません。一度目か二度目で飽きてしまいます。

なぜ巨大に作ろうとするのか?原因は二つに絞られる気がします。まずは土地の私有が原則的に認められていないため敷地として利用できる土地が政府から貸与されることが要因の一つだと思います。「巨大=素晴らしい」この思想で固まった行政機関から土地を借りるのですから、当然敷地は大きくなりがちです。そしてもう一つが厄介な問題です。日本の場合は土地を所有した後、段階を経て開発していくことが可能ですが、中国の場合敷地内をどのように利用して何ができるのか?開発を開始する前に全貌を見せなければならないということです。すべての施設が出来上がった最終形がどのようになっているのか?CGや模型で見せる必要があることです。これは難題です。工事は段階的に行っても最終的に完成したときにどのようになっているかは開発前に決めておかないといけない訳です。

こうした背景があるため、巨大な敷地に巨大な施設という計画になり、建設途中に資金が切れて頓挫したり、開業してもあまりに大きすぎてゲストからすると回り切れない、つまらない、一度で十分・・・。悪循環が始まります。

巨大な施設を作るということはそれだけ巨額な投資が必要です。これを短期間で回収するためには料金を高くするか、途方もない人数を呼び込むなどでして売り上げを稼がなければなりません。もともとテーマパークビジネスなど入場料で売り上げを賄っていく施設は利益を30%も40%も出せるわけがありません。一施設に巨額な投資をすれば巨額な減価償却が生まれ、巨額な維持管理費がかかります。当然利益幅は縮小します。

こうした悪循環から逃げるためにはどうすべきなのか?計画の段階で敷地が100ヘクタールを超える広さならば、複数の施設を作ることを前提にすべきです。大人の足で1時間に1キロ強の距離を移動するとして、4時間なら4キロ~5キロ、8時間なら8キロ~10キロ程度が歩いて回れる限界です。まして子供を連れていたり、ベビーカーで散策するなどの条件が増えれば当然移動可能な距離はこれよりも少なくなるはずです。

ディズニーランドはこの点がよく考えられていて敷地の外縁に沿って大型のアトラクションが配置されているためゲストが自由に行き来できるのは50ヘクタール弱です。

この広さを超えるならば、テーマパークを二つに分けるか、テーマパークのように集客ができる水族館や動物園などを検討することが重要でしょう。二つのテーマパークのうち一つをショッピングモールにするというアイデアも聞きますが、ショッピングモールは売上形態や利益率などがテーマパークと違うので、同じような収益が上がるかというと難しいともいます。

こうすると最初の計画は複雑で作業が多くなります。だからみなやりたがらないのだと思います。

東京ディズニーリゾートは1983年にTDLが開業後、翌年からTDSの計画が始まっています。しかし開業は2001年で、その間は臨時(いつしか常用)の駐車場でした。もしTDRが中国的な開発で、TDL一つを今の倍のすべての敷地を使って作っていたら、入場料は1カ所しか取れず、入場者数もTDL一つ分程度の集客しかなかったでしょう。こうなると、昨今のUSJの猛追をかわし切れず日本で一番集客している施設のランキングは変わっていたかもしれません。

やはり開発は最初が大事です。敷地はそれを使って同じ人から何回売り上げを取れるのか?という視点で考えなければならない訳です。

広すぎた敷地を二つにしていて今の施設の2倍(とまではいかなくても1.5倍)の売り上げがあったら・・・。苦労を先にするか?後でするか?究極を言うとその違いなのですが、後でする苦労は永遠に近い期間続くことを忘れないようにしましょう。