【067】中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと(物販編 2/2)

前回は来店率についての話を中心にしましたが、今回は実質単価をもとに物販店舗の実力を測る方法などを語ります。

 


実質単価を増やすために必要なこと

これまで見てきたのは販売機会を確保する(≒来店率を上げる)ための手法ですが、機会を増やすとともに“売れる商品”を増やしていくことが必要です。つまり実質単価を増やす方法です。
来店率が集客数によって変動があり、常に平均値に近い数値で推移するのではないことを述べましたが、これは実質単価や販売個数についても同じことが言えます。

先ほどは入場者数単位での推移を見ましたが、もう一つ月毎に実質単価や販売個数、来店率がどのように推移しているのかをグラフ化しておくことも必要です。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと

中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと

 


日本では2月と6月が集客の谷といわれる時期ですが、こうした時期は実質単価も商品購入個数も他の時期よりも落ち込みます。「ゲスト数が少ない=混んでないからゆっくり見れる(≒売れる)」というものではありません。このような時期は積極的な増収策を講じても効果がありません。

一方、5月、8月という繁忙時期は実質単価も商品販売個数も増える傾向があります。
集客数が増えると実質単価が上がるというのは前述したところです。一方で混雑による来店率の低下が繁忙時期の問題でした

閑散とし過ぎても、繁忙になりすぎても店舗の売上に悪影響がある。とすれば最も稼げるのはどのような状態のときなのか?ここを知る必要があります。

 

実質単価と来店率の相関

実質単価は“ゲストが店舗で使う金額”です。多く使うというためには、「より高いものを買う」か「購入数が多くなる」のどちらかです。

まずは、実質単価と来店率の相関をグラフ化します。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


サンプルの施設の場合来店率が上がると実質単価は下がる傾向にあります。テーマパークや遊園地にある物販施設の特徴として退園前に利用が集中する。つまり来店率が上がるということは一時的に店舗が混雑することでゆっくり買い物ができなくなるため、実質単価が伸びないという状態にあります。

もしこのグラフの近似曲線が右肩上がりならば、物販店舗の運営は良好といえます。現状のまま継続するのが望ましいです。

注目したいのは三角で網掛けした部分で来店率が20%~30%数値にかなりのばらつきがあります。お店に来る人が少ないときはたくさん買う人もいれば、ちょっとしか買わない人もいる。どうやら単純に空いていればゆっくり回れてたくさん買ってくれるというものでもなさそうです。

 

実質単価と滞留時間(時間当たり消費単価)

日別の実質単価の実績と平均滞留時間の相関を見ます。ゲストが滞留1時間ごとにどのくらい消費するかという指標です。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


実質単価÷滞留時間(=時間当たり消費金額)と滞留時間の相関を見てみます。右肩下がり対数曲線が近似式として得られます。この式を使って時間当たり消費と実質単価のモデルをグラフ化します。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


各滞留時間の時間当たりの消費単価(青)に対して、滞留時間を乗じた推計実質単価(橙)を算定すると・・・

なんということでしょう・・・3時間が最も高くなり1630円くらいが最高値になりました。

このように年間集客100万人規模の施設では、滞留時間により実質単価がピークを迎えるところが顕著に表れることが多くなります。ここでは3時間ですが、このくらいの滞留者数を満たす入場者数による混雑度合いがゲストも気持ちよく買い物ができて、スタッフも一番良い接客ができる物販店舗の“スイートスポット”なのです。

 

推計と実績の考察

推計値では3時間滞留時に最も実質単価が高くなっていますが、実績を見たときに信憑性があるのか?を検証します。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


実績が点在している範囲を囲ってみる(橙点線)とA、B、Cの三つ線で実績値を大まか囲うことができます。

A線とB線が交わるのは2.5時間くらいが山になっています。一方C線を見ると2.5時間より3時間の方が上にあります。実績の密集地点も2.5時間のときより上側に多く集まっています。突出して高い単価を出しているのは2.5時間ですが、それ以外が3時間のときに比して少ないというのが特徴です。

一方3.5時間を超えたところではC線の下にはみ出る実績があります。
3.5時間以上の場合は実績の密集地点は3時間より上ですが、C線より下の実績が出たり、B線は3時間より低い位置にあります。時に下振れし、上振れしにくいが実績の密集は3時間より多い、という特徴があります。

3時間滞留時の実績は、下振れが少なく、上振れが大きいという両者のバランスが最もよく取れていることから推計値では最も単価が高くなっています。

 

このグラフが語ること

このグラフにおいて今回の算定では3時間が最も推計実質単価が高くなりました。これが現在のサンプル施設の物販店舗の実力です。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


ちなみにTDLは滞留時間の幅が非常に広い(滞留時間が長くても短くても実質単価が高い)ので、客単価も他の施設に比べると非常に高くなっています。TDL流の運営努力はこのスイートスポットの横幅を広げるのに貢献しています(赤点線)。
一方、USJは様々なコンテンツを入れ込むことで縦の実質単価を引き上げることが得意です(青点線)。魅力的ですが売れるものはできるだけ高く設定しよう(?)というのがUSJの特徴であり戦略です。

このようにこのスイートスポットを見つけられると現在の物販店舗の実力がある程度わかります。横に伸びていれば運営が頑張っているし、縦に伸びていれば商品開発がある程度成功しているといえます。

ちなみに、このグラフを前年と比較することで、物販の運営の評価、商品開発部門の評価にも使えます。売れないときにどちらの責任にするのかはこのグラフを使えば明確になります。

ここで疑問が出てきます。超繁忙時期で滞留時間が4時間以上ある5月や8月は実質単価が高いのに、時間消費から算出された数値は滞留時間が短い時期の方が高くなるのはなぜ?

超繁忙期から外れた時期はたくさん買う人と全然買わない人の差が激しいということが考えられます。店舗で快適な時間が過ごせるので爆買いする人が発生するが、一方でやはりちょっとしか買わない人もいる。

超繁忙時期は全然買わない人は少ない代わりにたくさん買う人も少なく、高い実質単価で平均的にゲストが店舗を利用する(ただし来店率自体は超繁忙時期以外よりも落ちる)ということになります。冒頭で述べた通りサンプルの施設は数少ない爆買いゲストによって売上が保たれているという状態なのでこのような結果になります。

サンプルの施設の課題は、この爆買いするような人をもっと増やして売上を伸ばすことです。
逆に言えば、このサンプルの施設では少数の爆買い状態の消費者によって収益が支えられているような傾向があり、この層を失うことになると大きなダメージを負うという危険性を持っているとも言えます。

一人何個買うのか?という指標

先ほどのスイートスポットで消費する金額で、ゲストはいったいいくつものを買っているのでしょうか?

これを知るために、実質単価と商品購入数の相関をグラフ化します。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


こちらは明確な傾向が見て取れます。一定金額刻みで1個、2個、3個、4個と実質単価が高い時ほど、商品購入個数は増えています。

先ほど推計した実質単価(1630円)と合わせてみると、このお店で最も実質単価が高いゲストは
「滞留時間が3時間くらいの日に来場する人で、1600円強の金額で、最大3個程度店舗の商品を買う人」
何となくゲストの姿が見えてきます。

 

運営努力に活かす数値と商品開発に活かす数値



この先で考えないといけないことはお店の運営努力として必要なことと、売れる商品の見直しということになります。

先ほどのグラフの横赤線の問題

運営努力として必要なことは長くいるほど消費を増やしてもらうことが大命題です。3時間いる人が1500円以上使うのに、それ以上いる人の消費が下がってしまうという現象を解消する必要があります。年間集客100万人の遊園地やテーマパークは平均滞留時間が4時間くらいというところが多いので、せめて4時間までは消費が下がらないような努力が必要です。店舗の商品の配置、棚替え、ポップの見直し、従業員のアピールなどで対応するべきところです。

先ほどのグラフの青縦線の問題


もう一つは商品単価の増加です。今回の推計結果は500円刻みでしたが、実際に販売されているものが果たして500円刻みの価格帯構成になっているか?という考え方です。もし売れ筋品が1200円のものしかなかったら、1600円の実質単価のゲストは1つしか買わず、あとは別のものを400円買うか、もしくは400円をチャンスロスすることになります。
売れ筋が500円だったら3つ買って1500円使う可能性があります。さらに売れ筋が600円だったら、2個にして実質単価内に収めようとするか、思い切って3つ買って1800円払うかという選択肢が生まれます。後者にはまれば単価アップです。

日本のテーマパークは箱菓子の売上が全商品の4割以上を占める場合も多く大切な販売商品です。

こうした商品の落とし穴として多いのが、箱の大きさです。地元の菓子メーカーの箱をそのまま流用すると、もともと贈答用に考えられた大きめのサイズだったりして、お土産として職場に持っていく際に鞄に入らないので購入をしなくなるというケースもあります。店舗で購入するときにゲストは購入した商品を自分の希望する場所(家庭、職場、学校、異性へのプレゼント・・・)まで運ぶ姿を想定します。商品が気に入ったものでも、この過程ではじかれてしまうこともあるのです。これは最悪のチャンスロスです。

TDLやUSJなどはこの点が実によく考えられています。最近では水族館でも同じような取り組みが始まってきています。大きな箱で1000円取るよりやや小さ目な箱で600円×2を狙うという考え方です。売上は商品単価×想定購入個数という二次元で考えないとチャンスロスが出ます。

もう一つ気を付けなければならないことは商品の投入時期です。もともと購入意欲が強い滞留時間3時間の時期は、超繁忙日ではありません。超繁忙日は混雑による来店率や購買意欲の減少で売上が伸びない可能性があります。新商品の効果をはっきり知りたいのであれば、こうしたゲストが利用しづらい時期は避けて投入する方が成果を判定しやすくなります。

物販の売上を増加させたいときには
やみくもに平均単価だけを見て、それに合った価格帯の商品を新たに販売しても売上は伸びません。実質単価と時間消費などを分析したうえで商品は開発されるべきです。

 


【おまけ】団体と無料優待は全くの別物である

自粛続きが続くとなかなか集客が以前のように戻らない。しかも近年は豪雨や地震などの自然災害での集客減を挽回できていない施設もたくさんあります。このため個人のレジャー目的で来訪を待つだけではなかなか目標の集客に届かないことも多くなりました。

施設側として集客のために仕掛けることといえば、団体の獲得と無料優待施策。

しかし、この二つは物販施設に与える影響が全く違うので注意が必要です。

 

団体比率と来店率の相関


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


サンプルの施設では団体比率が上がると来店率が上がります。
一般的に団体で来る人は誰かしらにお土産を持ち帰る必要性を感じています。学生だったら両親、職場や仲間うちなら一緒にこれなかった職場の同僚や家族など、その場にいない人に対してお土産を買う意識は個人客より高い場合が多いです。

このため、団体が増えると来店率が上がる。さらに店舗の実質単価が上がるという効果が出てくることが多くあります。

 

無料優待比率と来店率の相関


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


サンプルの施設では無料比率が上がるほど来店率は下がっています。

一般に無料優待で来た人が増えると物販店舗の来店率は下がります。別の機会に話しますがこの現象は飲食店舗でも発生します。
入場時にお金を払わない人は、園内でもお金をなかなか使いません。つまり施設側から見れば上客とは言えないのです。

これと同じことは年間パスポートなどを利用した常連客にも言えます。ただし、年間パスポートのように先払いしてでも利用する客の中には、その施設を心底愛していて、物販も飲食も大量に消費する人もいます。

施設側として誘客するという目的では同じですが、団体と無料優待は二次消費に関しては大きな差が出ることはよく考えておく必要があります。

 

 

 

【終わり】

 

 

 

 


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