【063】長く使える運営作業手順書の作り方(後編)

前回に続いて、SOPの話をします。

今回は、どんなことをSOPに書いたらいいのか?という話です。

 


家電製品の取扱説明書との違いは何か?

マニュアルという言葉で多くの人が想像するのが「家電製品の取扱説明書」ではないでしょうか?学生の頃に“能書き本”とか揶揄していましたが、自分が学生の頃はそんな感じのものが多かったです。

今の家電製品の取扱説明書は昔と比べ物にならないくらい進化しているものが多いです。加えてオンライン化なども進んでいて、特殊な使い方でもしない限りは事足りる場合がほとんどです。

こうした時代なので、レジャー施設の管理者の方の中にはSOPも家電製品の取扱説明書のようにしたいという方もいます。読みやすさなどまねすべきところは多いのですが、SOPは家電製品の取扱説明書とは使い方が違います。

家電製品の取扱説明書は利用者が使い方でわからなくなったときに、必要なところを読むという使い方がほとんどです。なので作る側は利用者が陥ってしまった不具合の解消を意識した作り方をしています。“こんな症状”という検索で“その解決方法”が記載されています。もちろん最初から取扱説明書を読めば大抵のことはわかるようになりますが、自分を含めて多く人は冒頭から読み進めて全部読んだ後に製品に触るようなことはあまりしないと思います。

一方で、レジャー施設のSOPは冒頭から読むべきものです。SOPの主たる読者であるトレーナーが「(自分は)知っているから」、「(自分は)得意だから」といって飛ばして読んでから教育を行ったら、他の従業員と同じ手順で行わない従業員が続出します。

SOPにはその施設の理念や決められたルールがあり、それを順守することは重要です。だからSOPを読む人は初めて読むときには必要なところだけつまんで読むのはよくありません。ここが家電製品の取扱説明書の読み方との違いです。

相手にするのが機械ではなく、人間なので、その施設の理念やルールを理解して全員が同じ手順で正確に業務出来るようにするためにSOPが機能しないといけないのです。

ただし、SOPに乗っている手順自体が、実情と変わってきたと読者(主にトレーナー)全員が認識してきた時には、改定や更新が必要であるということになります。

 


トレーニングのためのSOPには何が必要なのか?

先ほど、以前かかわった施設で自分の作ったSOPがトレーニングテキストになるために大幅に書き換えられてしまった話をしました、後で考えてみると最初に作ったSOPにはいったい何が足らなかったのか?という話します。

操作の手順、その時にゲストに伝える言葉など盛り込んでいたのですが、実際にそれで教えるためには欠けていることがありました。

「なぜその手順でおこなうのか?」

でした。トレーニングを行う人にとっては最も重要なことです。これを教える従業員に伝えないと手順が乱れます。従業員にとって面倒なことや手間がかかることから乱れ始めて、いつしか手順は別のもの(大抵は簡略化されて雑になる)になります。

テーマパークを名乗る施設ではこうした事象は大きな問題になります。その施設の世界観やテーマ性を壊してしまったら、ゲストは施設側の思ったような楽しみ方をしなくなり、消費も落ちていきます。

一見、手間のかかる面倒な手順ほど、「なぜ行うか?」を明確にしなければならないのです。トレーニング用のテキストを見ると、手順よりもなぜ行うか?という意識についての記載が多くなっており、衝撃を受けました。

自分の作ったSOPは、神様にお祈りをするときの手順だけが記載されていて、なぜ神様にお祈りするのか?ということが書いていない聖書のようなものだったのです。


長く使える運営作業手順書の作り方


「なぜその手順でおこなうのか?」が上手に伝えられるトレーナーは評価が高い人が多いです。TDRやUSJのトレーニングを見てもこうしたところはとても上手です。一方で別の施設では「なぜその手順でおこなうのか?」については時間を割かないところも多くあります。

「なぜその手順でおこなうのか?」→「どのような手順で行うか」→「ゲストには何を伝えるか」→「注意や確認作業はどうするか」。このことに気が付いたのは最初の衝撃からずいぶん経ってからのことでした。

「なぜその手順でおこなうのか?」これを最初に正確に教えることで、最初に持っていた業務に対する熱意を失うことなく、手順を習得していくことができます。「(そんな面倒なこと)なぜするのか?」という疑問が解消されないと、業務に対する熱意はどんどん冷めて、最悪離職につながってしまうのです。

 


SOPには何が記載されているべきなのか?

「なぜその手順でおこなうのか?」
「どのような手順で行うか」
「ゲストには何を伝えるか」
「注意や確認作業はどうするか」
こうした内容が必要なことは理解したのですが、もう一つ大事なことを記載しておく必要があります。

最近は、トレーニングを受ける従業員に日本人ではない人が増えています。今や日本の一次産業から三次産業までほとんどの業種で日本人以外の従業員を採用することが一般的になってきました。

こんな時代になったのでなおさら、もう一つが大事です。それが

「BAD & GOOD(悪い例と良い例)」

です。
手順の説明をする際に、正しいやり方と間違った(間違いやすい)やり方を紹介することです。今までSOPには正しいやり方を記載するだけでいいと思っていましたが、何度か改定する都度、発生しやすい間違った例などを入れておくことも求められるようになってきました。

日本だと主に外国人に対しての説明用になるのですが、国土の大きな国だと地方によって慣習や文化が大きく違うので、その施設の採用している方法=正しいやり方、となるからです。従業員の地元では別の方法で行うが、この施設で採用している方法で覚えてもらうためです。

トレーナーのためのSOPという視点で考えると、記載時にはBAD→GOODの順に記載する方が良いようです。
人間は新しく記憶したものの方が後に残ります。GOODを先に教えるとそのあとのBADの印象が残ってしまうのでよくない結果が出ることが多いようです。

 


これからのSOPの主流になることとは何か?

最近は映像を使ったSOPを依頼されることも増えてきました。無料で使える動画サイトなども増えて、従来はトレーナーがいないと教わることができなかったことも、自分のスマホで教えてもらえるような環境もできてきました。さらに文章は見るのは好きではないけど(それはまだ問題なのですが・・・)、映像は我慢できる人も増えています。

そんな時代なので、従来文章で作っていたSOPをビデオ化したいというのは当然の流れだとも言えます。

しかし、そんな時代ですが、やはり文章で作ったSOPは必要です。その理由は極めて簡単です。台本なしに演じられるほど優れた役者さんのような従業員はほとんどいないからです。

映画でもテレビでも必ず台本があります。演技のトレーニングをしているプロの役者さんでも台本がないと監督の要望する演技はできないのです。これはレジャー施設で働く従業員についても同じことが言えます。もっと言えばプロの役者さんほど演じられない人がほとんどですから台本なしに演技したところで結果は知れています。

その意味ではビデオSOPは “ビデオトレーニングテキスト”と呼ばれるべきもので、そのもととなるSOPはやはり文章で作っておく必要があります。

映像を作ることだけにこだわると、本来教えるべきことが抜けたり、今まで書いてきた内容にある失敗例と同じことが起こります。

トレーニング映像を作るための台本としてのSOPという考え方がこれからは主流になっていくのかもしれませんが、本来のSOPとトレーニングテキストの関係性はこれからも変わらないと思います。

 

終わり

 

 

 

 


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