【062】物販商品開発で大事なこと“つがい理論”とストーリーの作成


国が成長すると爆買いするのは世の習い?

中国人観光客が日本で通常では考えられないほどの買い物をする”爆買い”という言葉が生まれてから数年経つ。日本ではこのような消費行動をする民族なのだから、本国でも凄いのか?といえばそうではない。少なくともテーマパークなどのレジャー施設においてはこのような行動はほとんど見られない。

東京ディズニーランドでは何かに憑りつかれたような消費意欲の中国人客を多数見るとが、上海や香港のディズニーランドではこうした人はほとんど見られない。

このような風景はかつて日本人にもみられた時代があった。1970年代後半頃に世界中から「JAPAN Money」と揶揄された時代。日本人は世界の各地でこのような消費行動をしていた(と記憶している)。

急激に経済成長をした国民は自分の富の証として海外で爆買いをするというのは世界共通のようである。しかしここでは商品が良いかどうか?という意識はあまりない。自分の知り合いが来ていない(当分来れない)ところで買い物をすることが大事なのであって、買い物という自分の欲求を満たした結果として残るのがお土産になる。その土地の商品が気に入ったから買い物をしたというのではない。

そう考えると中国人がディズニーランドといえども自国の施設で買い物をしないのは納得がいく。彼らにとってはお土産とは自分の富の象徴であり、お金を使えるということを周囲に知らしめるためのものなのである。自国の施設ではなく、外国に行って買ってきたというところに美点を見出しているとも考えられる。

しかし、中国も経済が減速してきている。この先は自分の見栄のためなら有り金全部使おうという考え方にはならないだろうし、周囲の人のためよりも自分(により近い人だけ)のためにお土産を買う機会が増えていくと思う。

 


日本のお土産、箱菓子の力の凄さ

以前このブログでも書いたが、今の日本のお土産は誰に対してのものか?を強く意識して作られている。そもそもお土産を買うときには一緒に来ていない知り合いを意識して買う。そして渡す場所に運ぶための手段を考える。こうした中で小型化、小分け可能などのもの主流になる。特に菓子などのお土産はその傾向が強い。

世界的に見ても箱菓子がこんなに売れる国は日本くらいだろう。「菓子の本場」と個人的に思っていたフランスのディズニーランドパリですら、箱菓子は種類も少ないし、売れているようには見えなかった(アメリカと上海には箱菓子すら存在しなかったことを考えるとパリは多少菓子に対する意識はあると思うが・・・)。フランスに滞在して感じたのだが、菓子は持ち帰るものではなく、その場で食べるものという意識が強いのではと思う。アメリカのディズニーランドに至っては、園内で売られている菓子類はというと袋詰めのポテトチップス程度である。

箱菓子(菓子に限らず箱詰めした飲食物)のお土産というのは、江戸時代のお伊勢参りで庶民に広まり、参勤交代制度で支配者層に広がったと自分は思っている。世界との交流を断ち切った状態で250年も平和な時代が続いた日本だからこそできる特殊な文化といえるであろう。こんな特殊な環境は世界的にも稀なので、そのまま自国のお土産の販売方法として取り込むのはかなり無理がある。

ただし、日本で売れていることは事実であり物販売上の根幹となっていることを考えると、日本ほどとは言わずとも、中国でも菓子のお土産というものをもっと真剣に考える必要は少なからずあると思う。

 


玩具作りの視点の違い

日本でもテーマパークや遊園地、水族館などで玩具のお土産が売られている。中国でも玩具の扱いは同様であるが、いくつか決定的な違いがある。その最たるものが

「商品の入れ替えを意識して開発される」

という点である。

日本の場合、レジャー施設のお土産といえども季節単位で入れ替える。この際売れないものは廃棄されることになる。よほどの定番品でもない限り年中通して商品棚に大挙して陳列されることはない。

入れ替えることを前提に商品が開発されているので、初期段階から大量に発注されることはあまりない。

一方で、中国のレジャー施設の物販店舗を見ると同じ商品が大量に陳列されている。しかも商品棚を見ると、埃がついていたり、商品の一部が壊れていたりなど、明らかに長期間同じ場所に置いているという痕跡が見えることが多い。

一回の発注数を多くすることは商品単品の仕入れコストを下げることができるが、売れ筋になれるのかどうかを判断する前から仕入れコストを意識しすぎるとこのような結果になる。仕入れコストを低くしても、不良在庫になってしまっては損益が大きくなるだけである。

 


つがい理論とは何か?

日本ではキャラクターと呼ぶが、中国ではIP(Intellectual Property)と呼ばれることが多いがテーマパークや遊園地、水族館に加えて最近は地方政府のアンテナショップなどでもキャラクターを採用するところが増えている。

しかし、レジャー施設にとってキャラクターとはリスクの高いものであることを理解して制作しているところは少ない。キャラクターは作ることよりも制作後に、施設内での認知度を上げて集客につながるような人気が出るように育てていくことがとても大変な労力がかかるという点を見落としているところが多い。

日本のテーマパークでキャラクターといえば、TDRのミッキーマウスやUSJのスヌーピーなどを思い浮かべる人も多いが、これら(彼ら?)はテーマパークで育てられたキャラクターではない。もともと映画や漫画などで十分に告知され、育てられ、人気知名度ともに抜群になったキャラクターである。同様のことはサンリオのハローキティにも言える。すでにレジャービジネスの外で有名になっているものを取り込むので、キャラクターのファンを施設に取り込むことができる。

その施設のために新たに作ったキャラクターは、デビュー当初は人気も知名度もない。それをどのように育てていくか?製作段階からこの点をしっかり協議しておく必要がある。また、成長方法を製作段階から真剣に検討してくれる業者と制作にあたらないと大抵は失敗する。

成功しているキャラクターは初期段階では主人公(単体もしくは少数グループ)だけである。ミッキーマウスも最初は彼女のミニーマウスだけが登場してスタートしている。ハローキティは単体でスタートしている。

ミッキーマウスを例にとるとわかりやすいが、彼女がいて、続いて友達(ドナルドダック)がいて、ペット(プルート)がいて、友達の彼女(デイジーダック)と増えていく。いきなり大量には登場しない。このようなキャラクター育成ができることが重要なのである。

最初のキャラクターの認知度が上がったところで”つがい”を作り、さらにそのつがい、そのつがい・・・。キャラクターをペアにして増やしていくことが重要な戦略といえる。

この手法は日本のアニメのキャラクターを増やす手法でよく採用されている。最初は主人公(一人か少人数のグループ)がいて、そこに別の個人かグループが参加し、次の個人かグループが参加と繰り返すことで最終的に全キャラクターが登場する。

“つがい理論”でキャラクターを育成するためには、キャラクター制作といえどもアニメや映画のようなストーリーを作成することが必要になる。つまりキャラクター戦略とはほとんどがキャラクターを育成するためのストーリーを作ることであるといっても過言ではない。その中で、常に”つがい”を意識して徐々に増やしていくことが重要なのである。

 


つがい理論で考えるとお土産の幅はどう変わるのか?

最初から多数のキャラクターを揃えてしまうと、それぞれのキャラクターの序列が発生する。つまり人気のあるものとないものが出てしまう。売れるものができた一方で、人気のないものの不良在庫が出てしまっては物販商品としては意味がない。これではキャラクターを作る意味がない。

TDRに登場した「ダッフィー」はまさにこの”つがい理論”で増殖している。ダッフィー自体はもともと「ディズニーベア」という名称の鳴かず飛ばずのぬいぐるみであったが、TDRでミニーマウスがミッキーマウスにプレゼントしたぬいぐるみという筋書きがついて、名称もダッフィーとなり2009年頃から人気が出る。2010年にダッフィーの友達で「シェリーメイ」、2014年に「ジェラトーニ」、2017年に「ステラルー」と増殖していく。2018年には香港ディズニーランドに「クッキーアン」、同じく2018年にはアメリカで「オル・メル」と海外でも増殖している。一つのストーリーに載せて、順次”つがい”理論で増やした結果。どのキャラクターも人気があるものに育て上げた。

強力な映画の力と日本一集客力のあるTDRですら、このような長期戦略でキャラクターを育てているのである。この点は今後キャラクターを製作しようとする施設では参考になる点が多いと思う。

一定の期間を設けて新キャラクターを登場させることで、買う側(ゲスト)は全てを揃えていくという活動がしやすい。いきなり多数のキャラクターがあると、どれを選択するかを迷ったり、金銭的にも一度に全てを揃えようという気持ちになりにくい。一定の期間を設けて順次登場させていくことで商品をすべて揃えるゲストが増えて最終的にゲストの単価を上げることにつながる。

 


アパレル商品の開発

レジャー施設における定番商品としてアパレル商品がある。日本では近年急激に外国人観光客が増えてきていることもあり、日本独特の文字を使った商品などがある。下の写真は東京ディズニーランドで販売されているTシャツである。


物販商品開発で大事なこと“つがい理論”とストーリーの作成


日本のテーマパークなどレジャー施設は、菓子類の比率が高いので相対的にこうしたアパレルの品数は少ない。

一方、アメリカはアパレルが実に多様で興味深いものが多い。キャラクター開発と違ってアパレルは一発で当てることができる商品も多く、アメリカのアパレル商品の嗜好は中国でも参考になる。

 

アメリカでも”つがい理論”を使った面白いアパレル商品販売例がある。


物販商品開発で大事なこと“つがい理論”とストーリーの作成


同じ柄であるが、書かれている文字により男性用と女性用に分かれている。一枚だけ買うという雰囲気の商品ではない。つまりどちらかを買う人はそのつがいも買うという傾向が強くなる。販売力が倍になる商品ともいえる。
ちなみにこの商品であるがディズニーワールド内で年配の夫婦がペアでこのTシャツを着用している姿をよく見かけた。

 

一方で、彼氏や彼女がいなくてペアになれない人にはこんな商品もある


物販商品開発で大事なこと“つがい理論”とストーリーの作成


お店の人に聞いた話だが、プリントがややかすれているようにみえるのは、「独りでいる期間が長くてシャツがこすれてしまった」というイメージにするためだそうで、これは新品の状態である。

  


物販商品開発で大事なこと“つがい理論”とストーリーの作成


おなじみのスターウォーズの話から作られたTシャツである。「Forceが強い」というのは映画の中でも何度も聞くセリフだが、「In My Family(私たちの家族は)」と入れることで、これを子供連れの家族で着用にしている人たちもいる。家族間の絆が強いというアピールとしても使える。

 


物販商品開発で大事なこと“つがい理論”とストーリーの作成


同じくスターウォーズに出てくる兵士の写真がプリントされているTシャツ。仮面をつけているので無表情なのは当たり前であるが、その下に感情が文字で表現されている。
購入する人に聞いたら、日頃無表情で付き合いの悪い上司にプレゼントするために買ったそうだ。冗談で済むかどうか?ギリギリな感じもするが、こうしたちょっとブラックジョークなものもお土産化できるところは評価したい。


 物販商品開発で大事なこと“つがい理論”とストーリーの作成


さらには、アトラクション「ホーンテッドマンション」のコスチュームを模したTシャツ。日本でもそうだが、アメリカのディズニーランドでもホーンテッドマンションのコスチュームはゲストに人気だそうで、それを着たいというゲストのために作ったらしい(ホーンテッドマンション近くのレストランで食事した際に隣にいたマニアの人に教えてもらった)。

 

 

アメリカの場合は、ストーリーに沿ってじっくり育てていくというよりは、すでに存在しているストーリーを使って「ちょっと笑ってしまう」という商品を作っているものが特にアパレルには多い。

この方法ならば、キャラクターのように長く時間をかけることもなく、題材さえ当たればたくさん売れる可能性がある。

レジャー施設ではこうした「笑いを取れる商品」というのは重要である。こうした商品が色々あるだけで、入場の動機を作ることもできる。

長い時間をかけて育てていくもの、短期間に一発勝負で作れるもの、物販商品になりえるものは色々あるが、大事なことは

「商品を作るための背景になる商品そのもののストーリーと、ゲストがどのように使ってくれるか?という利用のストーリー作りである」


と成功している施設は教えてくれるように思う。

 

 

 

 

 

 


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