【083】「言い訳を付けて放置しないから、いつまでも新品同様」の10年後
10年経っても“すごかった”
2018年に東京ディズニーランドは35周年を迎えました。1年に3回以上は行くのですが相変わらず施設はきれいです。著作出版当時は25年目でしたが、さらに10年加えて築35年の物件とは思えません。
この施設をきれいに保つのに重要な役割を果たしている人たちを紹介する番組なども放映されています。
https://hicbc.com/tv/backstage/archive/190512/
夜間に470人のスタッフが清掃を行うことでこの清潔さ美しさが保たれているとのこと。
運営しているオリエンタルランド社の会社概要で見ると従業員3411人、準社員(一般企業のアルバイト)19497人(2019年4月現在)だそうで、全スタッフの約2%が夜間の清掃に当たっているということになります。
TDLの営業時間は通常で8時~22時。開園前準備、閉園後の片付けなどを考えると作業ができる時間は23時~長くても翌7時くらいまで、つまり8時間程度。入場するゲスト数が一日5万人以上の施設でその1%にも満たない人が夜に活動することであの清潔さが維持されているということになります。
日本のレジャー施設でも夜間清掃を行うところはあちこちあります。夜間清掃において“TDLのここがすごいよ”という点はゲスト視点で清掃を行っている点でしょう。「ゲストが触るところ」、「ゲストの所持品が当たるところ」など清掃時に重視するポイントがゲストの行動から定められています。
また、清掃するキャストも翌日に利用するゲストが施設の世界観に浸ってほしいからという意識で清掃に当たる。施設を清潔に美しくすることを演じているまさに“キャスト”として業務をしているという点も貢献しているのではないでしょうか?
25周年と35周年のワールドバザール前の飾りつけですが、飾りの周囲の白壁、奥に見えるレンガ調の壁など、とても10年の月日がたったとは思えません。
2009年と2018年のウエスタンランド。2011年に震災があったのにもかかわらず、全く変わりません。
日本全体も“すごく”なった
さて、日本全国の施設を見て2009年に著作を出した時と比べると、いろんな場所がどんどんきれい(清潔)になっている印象を受けます。人通りの多い街中のビルの外観。駅や歩道など公共施設。もちろんディズニーランドをはじめとしたレジャー施設も最近は「汚いなぁ」という施設はあまり見ません(そうでないところも健在ですが・・・)。
歩道やビルの外壁などがきれいになったのは、高圧洗浄機やスチーム洗浄機の普及が挙げられると思います。10年前と比べると価格も性能も大幅に向上し、今ではお店や施設単位で利用しているところも多くなりました。10年前は地面や壁など汚してしまったらなかなか取れなかった汚れも、簡単に根こそぎ取れる。この機械の普及は日本の清潔さアップにいまや欠かせません。
TDLにしてもこの機械があるからこそ、従業員全体の2%程度のスタッフ数で済むのかもしれません。
そして、高圧洗浄機などで壁面を清掃するきっかけをあちこちに与えてくれたのが、イルミネーションやプロジェクションマッピングの普及ではないでしょうか?こうしたものを設置するために事前に清掃し、維持するためにも定期清掃を入れる。こうした今までは経費として組み込んでいなかったものにお金をかけるようになってきたのも一環でしょう。
最後に2011年の震災後、日本全土で見直された震災補強工事。これにより大きな目立つ建築物に補強工事がなされ、その際に外壁が補修されたこと。加えて、建材に汚れを付着させにくい素材が導入されたことなども影響していると思います。
10年前と比べると、従来はただの構造体でしかなかった壁面を顧客満足に利用する機会が増えたり、安全性を増すためだけでなく、清潔感も同時に増加させるための製品が開発されてきたことが日本全体をきれいに見せていると言ったらちょっと大げさでしょうか?
今や、日本は外部がきれいで衛生的であるということは、外国人観光客の来訪理由の一因にあげられています。日本の清掃技術は海外からは大きく評価されているということです。このため清掃に力を入れる施設も最近増えてきました。
その中で開園当初から「ゲストに楽しんでもらうため」という視点でずっと夜間も清掃を続け、ゲストにより汚れる場所などを特定して清掃を効率的に進化させているTDLの継続力はやっぱりすごいのです。