2024年度のTDR決算を勝手に考察

 

東京ディズニーリゾートの2025年3月期の決算が発表されました。

目次

2024年度実績

2025年の4月に発表された2024年度(2024年4月~2025年3月まで)の決算結果は以下の通りです。

入場者数 2,756万人(前年より微増、2012年度頃の実績に近い結果)
客単価 17,833円(過去最高)
売上 5521.36億円(過去最高)
営業利益 1404.28億円(過去最高)


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昨年は過去最高の売上、利益でしたが、今回はそれを上回る売上、利益を確保しています。入場者数は2008年~2012年頃と同じ水準です。


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単価は2008年~2012年頃の1.8倍になりました。


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営業利益は4.1倍と大きく増えています。

入場者の評価

今回の入場者数は約2,760万人でほぼ前年並みです。過去の実績で見ると、2008年度~2012年度付近の入場者数とほぼ同数になっています。


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2023年度のfactbookの実績で40代以上が大きく増えたことが話題になっていましたが、2024年度も同じ傾向になっています。やはり年間パスポートの終了による18-39歳の層の離脱の影響が強いようです。


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地域別の入場者数を見ると、昨年同様で関東からの入場者が減少しています。その他のエリアで目立つのが海外からの入場者です。昨年の1.2倍に増えています。日本国内全体が減少して、海外からの入場者が増えているという傾向が昨年よりも強くなっています。


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単価の評価

コロナ禍以降単価の急上昇が目立つようになりましたが、今回もこの傾向が続いています。昨年度16000円を超えたのも驚きでしたが、今年度は18000円に近い結果になりました。


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グラフを見た感じはチケット単価の上昇が目立ちます。各単価を評価してみましょう。

チケット単価

2024年度はチケットの値上げはありませんが、チケット料金は変動価格制の設定価格が昨年度よりも細分化されて、高価格帯が設定される日が増えています。このためチケット単価を見ると昨年度からさらに900円ほど増加しています。コロナ禍以降ずっと同じような上昇率で増えています。


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2020年以降は年間パスポートの利用が休止されて、2022年以降は有料の優先利用券(DisneyPremierAccess)が導入されています。最初は利用できる施設も少なかったのですが、現在は多くの施設で利用されるようになっています。価格は1施設あたり1500円~2500円に設定されています。


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年間パスポートが使えた時期、年間パスポートが使えない時期、更にDPAが導入された時期と分けて、チケット単価がどのように推移するのかを推計すると以下の通りになります。


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2024年度は明らかにDPAの効果が高くなっています。DPAがどのくらい利用されているのかを計算してみます。グラフの緑線の数値から青線の数値を引いたものがDPAの利用単価です。

2023年度のDPA利用率は「10%未満」という説明が2023年度の決算時にありました。そこで「限りなく10%に近い10%未満だった(≒10%)」と想定して、今年の利用率を算出してみると15%弱に増加しているようです。


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入園者の15%近くは、DPAを利用してチケット代金以上の金額を消費しているということになります。こうした予約料金のようなものは原価がかからないので収益としては非常に優れています。一方でDPAのようなものを使いすぎると「お金がかかりすぎる」という非難を受けます。昨今の東京ディズニーリゾートは「お金がかかりすぎる」という話がよくありますが、それを裏付ける結果になりました。

物販単価

コロナ禍以降は右肩上がりで伸びてきましたが、2024年度は昨年よりも80円ほど減少して、5000円強という結果になりました。この数値は決算書のテーマパーク内だけの物販単価です。


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物販全体の売上を入場者数で割ると園内物販単価5084円よりも多い5885円になります。これはテーマパーク外の物販店舗と通販による商品販売分があることが原因と思われます。


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そこで、園内の単価を園外の単価から差し引いて、園外売上だけの単価を計算します。以下の青い棒グラフが園外だけの単価です。


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続いて園外の売上の内、園外ショップでの売上を算出してみます。コロナ禍前の水準に売上が回復しました。


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園外ショップが回復したこともあり、2024年度の通販は前年度ほどの売上はなく、年間入場者数の5.2%が利用しており売上で162億円程度と推計されます。


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飲食単価

2024年度の飲食単価は前年よりも150円ほど増加しました。商品が売れたからというのではなく、原材料が高くなったために、利益に見合う価格の上昇が原因と思われます。


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コロナ禍前(2020年以前)と以降で、単価の推計をしてみると、明らかに2020年以降は高くなりました。物価の高騰による影響は昨年も見られましたが、昨年は772円に対して2024年度は852円とさらに影響が大きくなっています。


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単価まとめ

まずは2023年度と比較してみます。単価は2023年度実績と比較して1189円で増加しています。


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チケット関連では、すでに導入されている価格変動制の金額が細分化され、高価格帯の日が増加したことで、2023年度よりもチケット単価及び年パス廃止効果の項目で単価増が発生しました。更にDPAの設定アトラクションが増えたことでDPAも増加しています。一方で、飲食は価格転嫁の影響を抜いて考えると微増であり、園内物販に関しては2023年度よりも少なくなっています。

年間の入場者数が今期とほぼ同じである、2008年、2012年の客単価と比較してみます。当時の運営と状況を合わせるために、チケット単価は年間パスポートが利用できたと想定した推計値を利用し、物販は園内消費だけで、飲食は価格転嫁分の推計値を引いたもので比較します。


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2012年以前の運営に合わせた園内単価だけを見ると2024年度は14000円程度です。2012年度頃は単価が12000円に届いていませんでした。

これを比率で表示すると以下のとおりです。


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2024年度は飲食が以前よりも利用される比率が低くなっています。これはチケットや物販に比べて飲食の単価の伸びが弱くなっていることを示しています。つまりチケット料金や物販料金への消費の影響で、飲食の消費が弱まっていることを示しています。

次に、チケット代金を2024年の単価にして、2012年と2008年と比較してみます。


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これを比率にすると


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2024年度の物販の利用比率が高いことが目立ちます。2024年度は新しいテーマ施設「ファンタジースプリングス」が開業していますので、開業に伴う物販商品の売れ行きなどが影響しているかもしれません。

経費の評価

2024年度までの売上(線)、経費(棒)、営業利益(棒)は以下のとおりです。※コロナ禍だった2020年度と2021年度は除外しています


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2024年度は過去10年間で最も経費が高くなっています。

経費の内訳は以下の通りです。金額は年度ごとに左右しますが、経費の内訳の比率は各年度ともほぼ同じです。新エリアができたからといって極端に減価償却費用が増えたりすることはありません。


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年間入場者数は毎年変わるので、各年度を統一した基準で評価するために「顧客一人あたりの経費(経費単価)」で計算してみます。


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023年度と比較して増加が目立つのが「人件費」です。日本ではレジャー施設を含む全産業で人手が不足していることもあり、人材確保のための費用はこの先も増加していくことが考えられます。

施設更新費の増加分は、新エリアの開業に伴う経費と考えられます。


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飲食品の価格の高騰の影響により2024年度内には何度か飲食品の値上げが行われていました。ワゴンフードなども軒並み価格が上がっていたので、飲食の原価率は前年よりも下がったと考えられます。

営業利益

利益率で見ると過去最高だった2023年度よりも下がりましたが、これは新エリアの開業に伴う経費が入ったためと考えるのが妥当でしょう。

営業利益の段階で利益率25%以上確保できていれば、優秀な施設です。


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そして顧客が一人来ることで5096円の利益が会社にもたらされます。これは過去最高です。2014年度の利益率は2024年度とほぼ同じですが、顧客一人当たりが生む利益は3049円でしたので、1.7倍くらいに増えていることになります。

以前よりも少ない顧客数で売上を確保するという会社の方針を営業利益の数値が物語っているようです。

まとめ

営業利益率が10年前とほぼ同じですが、経費は以前に比べて多くかかっています。2024年度の経費で2014年の売上だった場合、利益は2024年度の4%程度くらいまで縮小してしまいます。


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2024年度は新エリアの開業に伴う経費や、10年前とは比較にならないほどの物価や人件費の高騰などの影響によるものと考えられます。

ただし、これでも利益が出ているという点は注目に値します。年間パスポートが利用できるような客単価でDPAや通販、更には飲食品の価格転嫁などをしなくても多くはありませんが、利益が出るような経費体制になっているということが言えます。この状態で、新しい収益項目が計上されてくるわけですから、過去最高の利益が生まれるのも納得できます。

今回の決算を解析してみた結果、以下のようなことがわかりました。

  • 従来の園内消費だけでは、今回のような利益を生み出すことができない。DPAのような有料予約や園外ショップや通販での売上の確保が必須になってきている
  • 一方で予約消費の影響などから園内での物販や飲食は頭打ちになってきている
  • 営業利益での利益率が25%を維持するため、顧客一人あたり5000円強の利益が出るような運営体制になっている
  • コロナ禍前の運営方法でも利益が出せる状態で、そこに新しい収益項目が加わったことで過去最高の売上や利益を達成できた

最近は東京ディズニーリゾートに対して、あまりにも強欲すぎるという批判をする人も増えています。確かに従来の運営方式でも黒字化しているのに、更に顧客に支出を促すような仕掛けが増えているというところを見るとそうした批判にも一理あります。 ただし、こうした利益を多く残すことはこの先の投資のために必要なことでもあると思います。決算と同時に発表された長期計画では既存の施設のリニューアルも計画されています。


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装置産業である以上、将来の投資を控えて利益を確保することは必要なことだということも理解できます。

2025年度はどうなるのか?逐次調査を続けようと思います。


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