【061】OTA頼みの集客施策が施設の売上を減少させてしまう恐怖・・・


前売りチケットでわかる混雑度合い

テーマパークや水族館の前売りチケットを買う際に日本ではコンビニのチケット販売を利用する人が多いと思います。
現地のチケット売り場で購入するよりも少し安くて重宝しますが、繁忙時期などには“取扱数終了”などの表示が出て売り切れている場合もあります。

いきなり余談になりますが前売りチケットでTDRのチケットを買う際に同じ日でもTDSの方が先に売切れていることがあります。年間で見るとTDLの方が年間入場者数では多いのに瞬間的な前売りではTDSが勝っているというのは面白いですね。


中国の前売りチケット(OTA)の日本との違い

さて、中国にも同じような前売り販売があります。日本と違ってITをフル活用したオンラインチケットエージェント(OTA)です。

便利なのは決済がネット上で終わり、現地ではQRコードを見せれば入場可能でとても便利です。外国人の自分ですら便利だと思いますので、実際の利用率もとても高いと思います。

日本と違うのはOTAで販売されるチケットの価格が変動することです。日本では前売り料金は通年ほぼ同じところが多いのですが、中国はこれがかなり変動します。


前売り券の利用で恩恵を受けるのは誰?

以前自分が働いた(日本の)施設でも繁忙期は前売り券を利用することを推奨していました。顧客にとっては早く入れるし、運営側にとってはチケット売り場に長蛇の列ができるのを回避できるというWIN-WINが成立していたからです。

しかし、前売り券の業者を含めて3者になると全てのWIN-WINを維持するのはなかなか難しいです。前売り券を取り扱う業者は発券一枚毎に手数料を取ります。

手数料を多く取るためにチケット単価を正価よりも下げて顧客の利用を促進したいのが業者の希望。

一方で繁忙時期は無理に施策を講じなくても顧客が動くので正価率が上がる時期なので値下げはしたくないというのが運営側の希望。

TDRやUSJのように年間で1000万人超の集客がある施設は別ですが、年間100万人弱の集客しかない施設にとっては繁忙時期の正価率増加は重要な増収源なのです。

結果として割引額は年間通してほぼ同じで、施設側が前売り利用を促進するような販促を行っているというのが現状。
自分は無理に前売り業者の希望に合わせずに入場料収入の正価率を維持する努力は施設側にとってはとても重要だと思うし、ここで前売り業者との関係を維持できているのであれば問題ないともいます。

一方で中国の場合。OTA会社に料金設定が主導される場合も多くなり、超繁忙時期でもOTA経由だととても安価でチケットが買えたりします。もともと集客力がある時期なので利用者も増えてOTA業者は手数料が増えます。その手数料をさらに増やすために割引を多くして利用を増やすという訳です。これは運営側にとっては切実な問題です。


繁閑差のある施設運営が引き起こす前売り多用の落とし穴

テーマパークにしても水族館にしても年間で見ると閑散期と呼ばれる時期が年間の半数以上、場合によっては200日くらいあるところもあります。

このため年間で収入の超繁忙時期の依存度合いが非常に高いという宿命があるビジネスモデルです。“稼げるときに稼いで後はじっと我慢して逃げ切る”というスタイルが年間を通して利益を確保するための大事な戦略なのです。

繁忙時期に顧客が予想通り来るかどうかは予測不可能なので運営側も不安があります。OTAのようにどのくらい売れているかをはあ育できる仕組みがあると安心できますが、肝心の利益という面で施設側が取れたはずの利益がOTA企業に手数料で流れてしまうという悪循環が起こるわけです。実にもったいない話です。

さらに悪いのはこうしたOTA企業と施設の営業部門との連携。営業という仕事がOTA企業との連携だけになるというのは最悪のシナリオです。


正しい営業業務の評価方法とは何か?

日本でもいまだに見られますが、中国では特に顕著で「どれだけ多く人を連れてくるかだけが営業の仕事」と捉えている営業職の人がなんと多いことか。。。

本来の営業職の仕事は「できるだけ高い正価率で目標数の顧客を連れてくること」です。
集客数だけを優先してしまう結果、肝心な利益に結び付く売上が取れないのでは何のための営業部門か?ということになります。

一方で価格を下げても良い時期もあります。閑散期です。固定費が高いテーマパークや水族館では集客により一人でも多く中に入れて消費してもらうことが必要です。

もともと顧客の動きが悪い時期に無理して動かすのであれば当然価格の操作は必要になります。ただし、動きたくないものを動かすには労力が必要です。

それは施設の営業部門もOTA業者も同じです。日本もそうですが閑散時期になるとチケット販売業者は告知などあまりしていません。

前売りを使っても集客が伸びない・・・となると最後に登場するのが施設の優待券(無料券)です。

OTAで安く設定しても売上は0にはなりませんが、無料券は売上0です。

施策的にどうしても集客が見込めない時期はこうした手法もありです。

ただしこの策はOTA企業が好みません。理由は簡単で「手数料が取れないから」です。無料なのですから当たり前です。
超繁忙時期に必要以上に割引を設定するのであれば、こうした閑散時期に無料券を発行してもらうのに協力してもらうのも手だともいます。

繁忙期と閑散期をセットで契約するのです。

無料券を配布したら配布先の顧客属性は取れても来場した属性までは取りにくいと思います。OTAなら利用した顧客の属性は取ることはできます。

チケットの販売はこのような戦略を立てて年間で計画しないとチケット単価が大きく落ちます。
中国のように全体の売上比率の8割以上がチケット売上に依存しているような施設ではこれは大きな損失になります。


大事なことは以下の4点です。

  • 施設として「正価率と入場者数」の両方を常に見ながら営業すること。
  • 施設で顧客を呼べる超繁忙時期は必要以上にOTA業者に頼らない
  • 閑散期こそOTA企業に限界まで働いてもらう
  • 超繁忙日に施設側が与えた恩恵(売上協力)は、必ず閑散時期に返してもらう努力句をすること

こうしないと、人(顧客)は来ているのに儲からないという施設運営になります。
顧客が来るということはそれだけ施設の人件費もかかります。これは経費を圧迫します。
儲けられる時期はできるだけ多くの利益を確保することにもっと敏感になる必要があります。

 

 

 

 

 

 

 


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