【059】TDRの決算書と行ってみた感じで見る再開後の検証


TDRの決算書で見る再開後の運営動向の検証


10月後半に東京ディズニーリゾート(TDR)の2020年の第二四半期(7月から9月)の決算が発表されました。ちょうどこの期間中の8月にTDRに行くことができて2パーク見てきましたので、自分の見た感じと決算書の結果から数値の重きを置きつつ解析したいと思います。10時前にTDLに入場したときの状態は上の写真の通りです。お世辞にも混んでいるとは言えませんね。

自分が行った時期のことはレジャー見聞録のページでご確認ください。(TDLはこちらTDSはこちら


決算期

期間

主な休日

第1四半期(1Q

4/16/3091日)

5月連休

第2四半期(2Q

7/19/3092日)

夏休み、9月連休

第3四半期(3Q

10/112/3192日)

冬休み

第4四半期(4Q

1/13/3190or91日)

冬休み、春休み


過去の四半期実績推移

TDRの過去(2007年度~2019年度)の決算期ごとの売上と営業利益の平均値は以下のようになっています。


TDRの決算書で見る再開後の運営動向の検証


これに対して2020年度の1Qと2Qの決算結果を以下に表示します。


 

入場者数

売上

入場料売上

物販売上

飲食売上

他売上

営業利益

 

実績:万人

単位:億円

         

第一四半期

51

38

10

0

3

-114

第二四半期

268.5

427

216

133

74

4

-79


第一四半期は休園期間だったため入場者はありません。第一四半期の入場料売上は6月25日から始まった7月分の予約入場による売上です。また物販は園外の商業店舗で販売した園内商品の売上が計上されているようです。

2008年からの第一四半期(1Q)、第二四半期(2Q)の売上と営業利益の推移をグラフに示します。


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2011年に発生した東日本大震災の影響で2011年の1Qが営業利益が赤字になった以外はずっと黒字でここ数年は1Q、2Qとも営業利益は200億円以上ありました。
四半期決算で連続して赤字になったのは開園以来初めてです。


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2Qの結果分析

近年の2Qの売上実績と損益分岐点売上(推計値)、期間中の日平均の入場実績を以下に示します。グラフの左側が損益分岐点売上、右側が損益分岐点売上を2Qの単価で割った入場者数です。


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2Qは一日平均10万人(2施設合計での数値なので1施設当たり5万人)の入場実績で推移していました。これに対して2020年は一日平均2.9万人(≒3万人)と従来の1/3程度に減少しています。

今年は新型コロナウイルス対応のため運営再開時は以下のような運営変更を余儀なくされています。

  • 入場者数は収容能力の50%以内にする
  • ショーやパレードは中止
  • 営業時間の縮小(従来8:00~22:00 → 9:00~20:00)
  • 密集、密接、密閉空間が発生するようなアトラクションは中止
  • 入場券も予約制でアプリによる販売のみ、年間パスポートの利用は利用不可

施設の利用に制限があることや入場者数を制限していることで売上減少、それに伴う運営経費節減により損益分岐点も下がりました。

それでも損益分岐点を達成するためには一日当たり2パーク合計で4.2万人が必要という結果になりました。日当たり1.2万人分の売上損失が出ていることになります。


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TDRが一日休園するとどのくらいの損失になるか?

2013年以降の2Qの損益分岐点売上と入場者数実績の相関をグラフ化します。


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ここで得られる推計式から、入場者=0(休園状態)では2Q(92日)期間中で359億円の赤字になります。1日当たり3.9億円です。

夏休みを含む期間、TDRは2施設で毎日4億円(1施設当たり2億円)稼がないと赤字になります。人数でいうと4万人程度が来ないと赤字という結果になりました。


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1Q休園期間実績での検証

1Q期間での営業利益は114億円の赤字、経理上で特別損失として計上したものが人件費145億円、一般経費69億円、これらを合計すると328億円です。

一方、先ほどの推計式を1Q(91日)で計算すると355億円です。

通常運営を前提にした状態で休園は355億円の損失するところを節減努力により328億円まで縮小させたとみることができそうです。


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日当たりの入場者はどのくらいだったのか?

運営の再開に当たって入場者数は最大で定員の50%以下とする。というのが国から定められた再開条件でしたが、実際には一日当たりどのくらい入場していたのかは気になる所です。
過去の損益計算書には入場者数についても触れられているのでここから解析してみます。
2Qは夏休みシーズンを含んでおり年間では集客数の多い四半期となるはずです。前年までの入場者数の平均値は四半期ごとに以下の通りです。


四半期

入場者数・人

1Q

7,456,642

2Q

8,774,092

3Q

9,902,705

4Q

7,832,022


2Qは7月1日~9月30日までの92日間なので一日平均は95,371人です。

一方で2020年度の2Qの入場者数合計は2,685,000人。268.5万人です。これは一日平均で見ると29,185人、約3万人です。

2Qの92日間を3万人を上限に運営していたのか?とも考えられるのですが、運営再開にあたっての会見などでも段階的に変更していくという発言もあったので、時期により変化させているように思います。

手がかりとしては1Qで38億円のチケット料金売上があります。

6月25日から7月分のチケット販売を開始して3日ほどで完売したので、すべて7月の入場者分と考えられるのでここから入場者数を推計してみます。

2Qの決算報告にはのチケット収入単価は6278円と書かれています。一方で1Qの決算報告書では3,844百万円のチケット収入が計上されています。

1Qは4月1日から6月30日ですから、この期間はTDRは運営休止期間でした。
しかしチケット収入が計上されているのは、7月からの運営再開に向けて予約を開始した6月25日からの分が計上されていることが考えられます。

7月分は6月中に売り切れているので、1Qの売上は7月分と考えられます。

3,844百万円÷6278円÷31日÷2施設=9,876人

という結果になりました。上限を1万人に設定し、完売後に決済されなかった分が発生したと考えると1日の上限を1万人(2パークで2万人)と設定して販売していたと考えて良いようです。

2Q全体で入場者は268.5万人です。7月が2パーク合計一日平均2万人(7月全体で62万人)ならば、残りは206.5万人。残り61日間の平均は16,926人。こんな中途半端な上限設定はしないはずです。

ここで考えてみたいのが、8月はお盆を境にして前よりも後の方が集客が多くなりがちなテーマパークや遊園地の集客特性です。また、夏休み後の9月は集客が落ちるはずと考えられます。

8月の前期と9月が同じ数値、8月の後期はこの時期よりも多いという前提で206.5万人になるように推計してみると以下のような場合が最も近くなります。


期間

日数

一日の設定上限

81日~87

7日間

30000

88日~831

24日間

40000

91日~930

30日間

30000


上記にようにすると、合計は207万人。この期間のどこかでTDLとTDSのどちらかの上限を5千人減らすと、206.5万人となります。

推計してみた結果、2パーク合計では

  • 7月(31日)→2万人、
  • 8月1週目(7日)→3万人
  • 8月2週目以降(24日)→4万人
  • 9月(30日)→3万人
  • 8月~9月のどこかで1パークだけ上限を5千人落とす

と設定すると達成できます。

 損益分岐点の4.2万人よりもかなり低い数値で入場制限をかけていたことが考えられます。

昨年までは平均で10万人来ていたので、昨年の3割から4割に抑えていたということになります。


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チケット収入単価増加の理由

まずは運営再開にあたって入場料金が改定されて大人のワンデーパスポートが8,200円になりました。パスポート料金が上がればチケット収入単価が上がるのは自明です。
2007年から2019年までの期間で大人のワンデーパスポート料金とチケット収入単価の相関を見ると以下の通りになります。


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ここで求められた推計式を利用すると8200円の大人料金の場合はチケット収入単価は5504円となるはずですが、実績はこれを700円ほど上回っています。

チケット収入単価を押し上げるもう一つの要因は客層が大人が増えることが考えられます。確かに2001年以降大人の比率は少しずつ伸びてきています。


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しかし、東日本大震災以降で見ると大人が極端に増えているということはありません。


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今まで大人の比率がある程度一定だったところが、アプリ予約だけの販売になったことで大人層が今回の2Qでは大きく増えたことが考えられます。
これはアプリ操作やネット予約が得意な客層が2Qの中心的な顧客属性になったことが裏付けられるとも思われます。


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飲食物販単価の増加理由

続いて物販、飲食の二次消費単価です。決算書内では「営業再開後の需要増」とだけ記載されています。

営業時間は短くなったのに、二次消費が伸びているという結果はどこから来ているのか?とても気になります。


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二次消費は滞留時間との相関が大きく、滞留時間が伸びれば消費も伸びます。

2008年以降はアニューアルレポートで滞留時間について紹介されています。2011年までは8.4時間、2012年と13年は8.7時間、それ以降は8.9~9.0時間です。

通年の2Qの時期は営業時間も長く8時~22時などもありますが、過去のデータがないので9時~22時という平均的なTDRの営業時間で考えると営業時間13時間に対して9時間滞留。

営業時間の70%弱の滞留時間です。

その比率で2020年の2Qも滞在したとしたら、平均滞留時間は7.5時間となります(2020年は滞留時間の発表がまだありません)。

一方で物販と飲食単価を滞留時間1時間当たりどの程度消費していくかを算定すると以下の通りになります。


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物販も飲食も1時間当たりの消費単価が大きく伸びています。
チケット収入単価で推計した通り、2020年の2Qは大人の属性が大きく増えていることが推計され、商品購入や飲食購入の機会や購入時の単価が大幅に増えたことが考えられます。

これはアプリを使った予約制が功を奏していると考えています。
アプリを使った予約、しかもこの時期は発売日に厳しい獲得競争に勝たないとチケットが入手できないため、大人比率の増加と園内で高額消費するコアファン層が増加。さらに入場者数の上限設定により従来はなかなか利用できなかったTDR内の高単価飲食店舗の利用などがしやすくなったことなどが考えられます。

その意味ではスマホアプリによる予約制の実施は、単価の向上には大きく貢献していると考えられます。


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総括

集客面では安全維持のための休止や節減などを極力行ったとしても現在の施設の規模からすると2パークで4.2万人の集客が必要な状態ながら、平均で3万人の集客に抑え込んでいるのは非常に厳しい状況と言えます。

一方で、アプリ予約という今までにないシステムでゲストを集めた結果、売上単価は従来よりも大きく上昇したことが伺えます。

単価をアップにはもちろん商品の魅力も必要不可欠です。運営再開後に実際行ったときにはしっかり新商品もあり、ちゃんとアピールしているところなども客単価向上に役立っていることは間違いありません。

苦しいながらもやるべきことはしっかりやっているのTDRの姿が、決算書からも伺えました。


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3Q以降は入場者数の上限も緩和され、新規施設も開業することもあり、今後の数値がどのように変化していくのかは注視していきたいと思います。


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