【056】TDRの入場料金最大700円値上げの理由はこれだ!?
以前の検証で2020年度のTDRが極限まで経費を削って何とか赤字回避を図っていたことがわかりました。
実際にはコロナ禍となりこの先は「WITHコロナ」という時代になるとすれば、コロナ対策の経費という新しい経費が付いて回ることになります。
今回はこれがどのくらい影響が出るのかを検証してみたいと思います。
2020年の経費の実態
項目別の経費はFACTBOOKに「売上原価明細表」として掲載されています。項目すべてをグラフにすると傾向がわかりにくくなるので主だったものをグラフ化します。
人件費が原価人件費と経費人件費に分かれていますが、原価人件費は準社員(いわゆるアルバイト)、経費人件費は正社員と役員が対象になるものと思われます。また委託費についても算定の大元は人件費であると考えられます。
実績だけで見ると人件費と施設維持費の突出が明らかです。しかし、2020年度はゲストを入れたくても入れられないという入場規制がありました。このためゲスト1名あたりの経費負担が大きくなるのは当然です。
コロナ禍以降予想される増加経費
過去の実績と同条件で比較したいので、多少無理して数値を調整します。
つまり、2019年度の利益率になるくらい入場者数を増やした場合の経費単価と2019年以前の経費単価を比較してみます。結果は以下の通りになります。
やはり目立つのは経費人件費、施設維持費、委託費などです。
WITHコロナの時代になれば社員人件費が準社員人件費に置き換わる可能性はありますが、総じていえることは以下のような内容になるでしょう
- コロナ禍の中で運営する際には、ゲストの間隔を空けたり、今までは必要なかった店舗前に列を設けたりなど人手がかかり人件費が増加する。
- アトラクションも定員状態では運営できないため従来と同じ利用者数でも稼働車両を増やす必要があり保守経費も増加します。
- 今までは必要なかったゲスト対応用のアクリル板、今まで以上の施設消毒の強化など施設維持費も増えることが考えられます。
このように考えると2019年度以前と同等のゲスト数でも従来の営業利益率は望めない可能性が高くなることが考えられます。
「WITHコロナ」時代は従来よりも経費単価が1000円上がる!?
そこで、入場者数ごとに経費単価がいくらになるかをコロナ禍の前後で推計してみたモデル式が以下のグラフです。
コロナ禍以降は経費単価が増加しており、損益分岐点付近である2200万人では1000円ほど経費が高くなっています。
経費が上がれば損益分岐点も上がる
過去の経費実績値から経費分の売上を達成するための必要入場者数を調べてみると以下の通りになります。いわゆる損益分岐点(人数)です。
以前も算出してみたのですが結果は今回も同じくらいで直近5年くらいは2300万人前後です。TDLに1300万人、TDSに1000万人程度のゲストを取り込めれば黒字化するということになります。
「WITHコロナ」の時期になった場合、2019年度以前よりも運営経費が増えることが予想され、ゲストの経費単価も増加します。このため対策として
- 従来の損益分岐人数を固定するなら売上単価を増やす
- 従来の売上単価を固定するならば損益分岐人数を増やす
このどちらかを実施しないと損益分岐点売上を確保することができなくなります。
人の密集がコロナ禍拡大の要因といわれているため人員を増やすことで解決するのは良作ではありません。そこで増加した経費単価を補える程度に売上単価を増やすことで従来の損益分岐点人数を維持するようにしてみることにします。
推計式の経費単価を過去の入場者数に合わせて経費単価の変化を推計すると以下のグラフのようになります。
売上単価はどのくらい上げる必要があるのか?
経費単価が増加つまり経費金額が増えても従来の営業利益率を維持するためには売上を伸ばす(=売上単価を上げる)必要があります。売上単価がどのくらい必要なのかを算定したのが以下のグラフです。
増加が必要になる単価を従来の売上構成比率で按分すると以下の通りになります。
10月からの入場料金値上げは理にかなっている!?
2019年から5年さかのぼり、5年分の平均値とともにグラフ化すると以下の通りになります。
平均して1500円弱の単価増が必要になります。
- チケット単価→700円
- 物販単価→500円
- 飲食単価→300円
というのが算定結果です。
2021年10月1日からTDRの入場料金は従来の8700円(最大)から9400円(最大)になります。その差700円。
こう考えると、多少は妥当性がありそうです。
物販と飲食についてはもう少し掘り返してみないといけないようなのでこれはまた別の機会にチャレンジします。