【053】イルミネーションの経費のかけ方はハウステンボス(とNHK)が教えてくれた!?
秋から冬の集客アイテム“イルミネーション”
秋から冬にかけてのレジャー施設の定番アイテムといえばイルミネーションと思う人も多いかと思います。
今回は、イルミネーションを始めとしたイベント施策は経費が公開されていない場合が多いのですが、テレビ番組で公開されていた内容からイルミネーションの効果について検証します。
テレビはNHK(国営放送)の番組なので情報に間違いはないものと思われます。
場所は長崎県のハウステンボスの話。年間来場者から2019年の実績のようです。
まずは、イルミネーションについて
イルミネーションを構成するLEDは1300万個、設置費用は1億円以上と紹介されています。
さらに、イルミネーションも安価なものと高価なものを使っているようで、単色LED(25円/個)とフルカラーLED(250円/個)があります。
単色とフルカラーの利用比率は算定できるか??
単色LEDで1億円使っても400万個しか設置できません。
これはどう考えるべきか?二つ仮説を立てました。
一つ目、
イルミネーションを始めた2010年から2019年までの設置経費の年間平均額が1億円と考える。つまり10年間で10億円使ったということになる
二つ目、
LEDの価格は定価で、実際は大量に購入することで割引を受けて1億円で収めた
という二つの仮設。
イルミネーションが2019年に突然1300万個設置されたというわけではなく、毎年規模を拡大して現在に至っていること考えると一つ目の仮説が妥当と考えられます。
そこで、
10年間で10億円の投資した結果1300万個のLEDが現在あるとして2種類のLEDがどのくらいの比率で利用されているのか?検証してみました。
- 単色LEDの数+フルカラーLEDの数=1300万個
- 単色LEDの金額+フルカラーLEDの金額=10億円
という方程式を解くと、
単色77%(1000万個)、フルカラー23%(300万個)だと10億円になります。
こんなに見事なイルミネーションも実はその8割近くが単色LEDを組み合わせているというのが実情のようです。
金儲けをしたい業者は「多機能な高額のLEDをたくさん使うと華やかな演出ができる」という提案をしてくる場合が多いのですが、提案を受ける設置する側にアイデアとイメージがあれば安価なLEDを中心にしてこれだけのイルミネーションを作ることができるといういい例です。
これは私の個人的な意見ですが、ハウステンボスのイルミネーションが成功したのは、元々花など植栽がきれいな施設で、どのエリアに何色を配置すると見栄えが良いかなどをスタッフが熟知していることが要因としてあるように思います。
イルミネーションの相乗効果
さてこのイルミネーションは経営にどんな影響を与えているのでしょうか?これも番組の中で以下のように紹介されています。
イルミネーションは夜に効果を発揮するものなので、滞留時間の増加に伴う二次消費の増加につながっています。
どのくらいの比率かというと年間売上255億円の10%つまり25.5億円
年間来場者数254万人なので、消費単価は1004円の増加ということになります。
果たしてこれは本当なのか?
番組情報を決算書で検証してみた
ここから先はハウステンボスの決算書から検証します。
イルミネーションが始まった2010年からの入場料金(大人)と伽単価の推移を以下に示します。
入場料金も値上がりしていますが、それ以上に客単価が伸びていることがわかります。2017年には10000円を超えています。
2010年からの推移でみると入場料金が35%値上がりしているのに対して、客単価は70%の増加と滞在時間が長くなることで入場料金以外に35%分も客単価を伸ばしています。イルミネーションで10%、他のアイテムで25%ということになるでしょうか?どちらにしても客単価の大幅増加に貢献していることは間違いないようです。
イルミネーションのような設備を導入して、集客と売上は伸びた。さらに客単価も上がっているが、それよりも経費が膨大になってしまっては会社としては利益が残らない状態になります。
このイルミネーションでの集客が始まった2010年以降の売上と利益を比較してみます。
2010年は赤字でした。しかしそれ以降は営業利益で黒字となり、2015年には営業利益が30%になっています。
経費のかけ方は妥当なのか?検証してみた
もう一つ「経費1円でいくら売り上げるのか?(1以下は赤字、大きいほど良い)」という指標は以下の通りです。
もう一つ「経費1円でいくら売り上げるのか?(1以下は赤字、大きいほど良い)」という指標は以下の通りです。
2019年は1.26です。もっともよいときは2015年で1.43。
ちなみにTDRはこの数値が2019年で1.36、USJは2017年で1,17が最高値です。
つまりイルミネーションで成功してからのハウステンボスはTDRやUSJと遜色がないくらいに経費効率が良い施設となっているということになります。
イルミネーション施策実施時の経費のかけ方の目安
ここで一つ目安となる数値が算定されます。
「イルミネーションという施策が客単価1000円増加する」という事実がわかれば、これに年間入場者数をかけるとイルミネーションによる増加売上が算出されます。250万人ならば25億円です。
この売り上げを達成するためにかけても良い経費の上限はというと、先ほどの「売上÷経費」で求められた数値を使うと
25億円÷1.26=19.8億円(≒20億円)
となります。つまりイルミネーションに関わる経費を20億円以内に収めていれば、目標とする売上に対して経費が圧迫することがないので経営に悪い影響を与えないということになります。
イルミネーションのような設備は規模を拡大すればその分利益が上がるように考えがちですが、上のような考え方で上限を決めて適切な金額と規模を決めて設置することも健全の経営のためには重要なのです。