【066】中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと(飲食編 1/2)


前回、前々回と2回に渡り“with CORONA”の時代における売上増加策を講じるための検証事項と銘打って文章を掲載してきました。前回までは物販の話でしたが、今回は同じような考え方で飲食はどうなるのかを検証していきたいと思います。

おさらいになりますが、大抵の日本のテーマパークや遊園地の消費単価は

利用料:飲食:物販=7:2:1

というのが常識的な数値です。ゲストの消費単価の2割くらいは飲食に割かれています。面白いのが、TDR、USJといった巨大なテーマパークでも消費単価の2割(~3割)になっており、TDRの物販のように極端に差が大きいというほどではありません。

これは人間の食べる量に限界があることが起因しているように思います。一度満腹になったらしばらくは食べないのが普通です。いくら食べ物を煽っても満腹ならスルーしてしまうという背景もあるように思います。

 

飲食の売上を構成するもの

売上と入場者


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


物販のときにも使ったグラフを再度使いますが、入場者が増えれば、飲食売上も当然増えます。飲食施設を利用する人がいるから売上が増えるのであり、飲食施設を利用する人の入場者に対する比率を喫食率といい、喫食率が高ければ飲食売上は増加します。

 

売上構成要素の推移

飲食店舗の実績を図る指標は以下のようなものがあります。

  • 喫食率=店舗の利用者数÷入場者数
  • 購入個数=販売した商品数÷店舗の利用者数
  • 客単価=飲食の売上金額÷入場者数
  • 実質単価=飲食の売上金額÷店舗の利用者数
  • 商品単価=飲食の売上金額÷購入個数

今回の検証では考慮していませんが、飲食店舗は販売方法の形態により三種類に大別されます。

テーブルサービス(TS)

ゲストが座席に座って、必要なものをオーダーし、喫食後精算する提供方式

ビュッフェスタイル(BS)

あらかじめ用意された商品からゲストが欲しいものだけを選び、レジに持ち込み精算、その後座席で喫食する方式
※バイキング方式などもこの範疇に入れます

ファーストフード(FF)

メニューから商品を選択して注文、注文した商品をすべて店舗で揃えて精算後に渡す、ゲストはその後喫食する

店舗の実質単価 TS≧BS>FF
というのが一般的な傾向です。

 

入場者数と単価の関係

物販のグラフと比べると客単価、実質単価とも目に見えて右肩上がりです。施設内が混雑しても食欲を我慢することは生き物として難しいということがうかがえます


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと

 


一方で喫食率を見ると平均値を概ね上回るような推移をしています。しかし、入場者が極度に多い右端にいくと喫食率は減少傾向にあります。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


客単価、実質単価とも伸びているのに、喫食率だけが下がる。本来は単価と喫食率は比例関係にあるはずなのに、こうした現象が起こるのはなぜか?

 

単価∝喫食率 とならない時期がある理由

こうした現象が起こる施設では以下のような場合があります。

  • 自販機を利用している
  • 繁忙時期に委託業者を入れる
  • 食イベントなどを繁忙時期に実施している

などです。このようなものは利用者数が算出しにくいので喫食率が下がるのに単価が伸びることがあります。本来は外してみるべきなのですが、見極めが困難なのと、自販機が年中設置されていることでこのような乖離が発生する可能性は年中同じであると考えてこのまま解析します。

自分たちの施設で同様の計算を行う際には、こうした喫食率が出てこない売上要素は外してみるとより正確な数値が出てきます。

 

混雑時に喫食率が下がるのはなぜか?

物販のときも検証しましたが、飲食の場合も客単価と実質単価を比較してみることは必要です。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


サンプルの施設の場合は客単価と実質単価の両方が右肩上がりになっています。前述の自販機の影響もありますが混雑してもどこかしらでゲストが飲食物を購入してくれているようです。

一方で、実質単価(橙色)の入場者数が少ないところを見ると、物販の場合上に突出した実績があったのですが、飲食ではあまりこうした傾向が見えません。これは物販ではいわゆる「爆買い客」が存在しえたのですが、飲食では「爆食客」というのが(常識的には)存在しないことが影響しています。

このように飲食の場合には、近似式の周辺に実績が密集する傾向があります。

続いて入場者数に対しての喫食率の推移を見てみます。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


近似式は横ばいで、入場者数の多少によらず飲食施設が利用されていることがわかります。

近似式が横ばいもしくは上向きになっているのであれば施設全体で見れば飲食店舗の収容能力は入場者数に追いついているといえます。

ただし、これはゲストが所望する食べ物を希望通り食べられるということではありません。混雑してみて希望の店舗が利用できなかったり、想定以上に待たされたり、別のお店で泣く泣く済ませたりなどという事態は発生する可能性があります。

もう一つ月毎の平均実質単価と平均喫食率をグラフ化してみます。


中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと


店舗の実質単価は12月~2月当たりが高くなっています。これも物販と比較してみると違いがあります。物販は実質単価の高低が繁閑差の影響を受けていますが、飲食の場合はその傾向があまり出ていません。喫食率では9月や10月が5月を超えたりします。

サンプルの施設では12月~2月の冬季は食べる人自体は少なくなるが、それでも食べてくれる人は消費意欲が高い。一方9月、10月の秋季は食べる人は多くなるが、あまりお金を使ってくれないという結果になりました。

商圏やゲスト属性は年中ほとんど変わらないのに、季節によってばらつきが出てしまうのは提供しているメニューの内容(食べ物の種類、温冷のバランスなど)については検討の余地があるということになります。

このような特性は中小の遊園地やテーマパークでよく見られる現象です。
12月~2月は冬です。寒い時期は遊園地やテーマパークに来てもどこかしらで暖まりたいという衝動が多くなります。飲食店舗の利用機会が生まれる可能性が高くなる時期です。一方で、喫食率は冬時期は落ち込みが大きくなっています。滞留時間が短くなることなどから喫食自体をしないゲストも増えることが考えられます。冬の時期は利用が二極化する傾向が出ています。

もう一つの山である9月や10月という時期は秋。日本では一般に「食欲の秋」などといわれるように食に対して意識が高まりやすい時期ということも影響しているのではないでしょうか?喫食率は上がってくるのに、実質単価は伸びがよくありません。中小の遊園地やテーマパークでは秋の時期は五月の連休や夏休みと比べると超繁忙日を含む期間がないことなども影響がありそうです。最近はハロウィンが遊園地やテーマパークに取り込まれることが多くなってきてはいますが、USJのような大掛かりなものは中小の遊園地やテーマパークではなかなか実施できないのが現状のようです。

中小の遊園地やテーマパークはTDRやUSJのようにシーズン毎に催事を行うところは資金的に難しく、飲食メニューも年間通して大きな変化がないところが多いので、季節変動の影響を受けやすいところが実は多いのです。

 

集客が増える5月や8月に喫食率や実質単価が伸びないのはなぜでしょうか?

一つ考える必要があるのは「持ち込み飲食物」です。最近は家庭で作った豪華なお弁当を広げて園内で食べる姿はあまり見なくなりましたが、施設近隣のコンビニなどで食べ物を調達して園内で食べるというシーンは見かけます。特に園内が混雑する繁忙時期には店舗内の混雑を避けるためにこうした行動を取るゲストが多くみられます。

中小規模の遊園地やテーマパークでは入場前の手荷物の検査などを実施していることは少ないので、名目上は飲食物持ち込み禁止でも現実は持ち込んでいる人が存在します。
このようなことも繁忙時期の喫食率の極度な増加が見られないことの原因と考えられます。

こうした傾向は施設独自のものなので、この文章を読んでいる方で遊園地やテーマパークの運営担当の方は自分の施設がどのように推移しているかを実際に算出してみることをお勧めします。
寒暖差が大きいところ、山合いの場所・平地の場所、など施設の地理的条件でも大きく変わってくる可能性があります。

 

 

次回に続く


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