【076】「工事中は徹底的に隠すことで期待感を高める」の10年後
出版当時この話を載せたのはテーマ性を重んじる施設においては、その製造過程は見せない方がよい。テーマパークであっても建設工事中は街中のビル工事の状態と同じであり、すべて完成するまでは“ネタバレ”しない方がいい。という話でした。
事実、この本が出るころまではTDLにおいてもリハブ(改装)中の施設は割合殺風景なフェンスやネットで覆われていました。
2002年ウエスタンリバー鉄道
2016年ワールドバザール
こんなフェンスやネットといったテーマパークにはあまり存在してほしくない部類に入るものをテーマパークの一つの装飾として利用するという、ある意味逆転の発想で利用するようになった草分けは自分の知る限りではUSJが先だったようです。
2017年建設中のミニオンパーク前
2016年の5月で終了した人気ライド「バックトゥザフューチャー」。この跡地には「ミニオンパーク」が2017年3月にオープンしています。この間、現在のミニオンパークはフェンスで覆われて先が見えない状態になっていました。
ここに設置されたフェンスが実に愉快。これから出来上がるミニオンと様々な態勢で写真が取れるようなフォトスポットとして機能するような立体画が描かれていました。
同時期のTDLの改装現場を見るとまだそのような仕掛けはありませんでしたので、恐らくはUSJがこれに関しては国内先駆施設だと思います。
このフォトスポットがSNSのインスタグラムの流行にも支えられて大ブレーク。「ユニバに行ったらあそこで写真を撮らないと」という人が多数現れました。特にグループで来る女性陣には人気がありました。
USJは期間催事をつないでいくというパークの運営なのでこうした目隠しフェンスの設置は宿命のようなところがありますが、以降、フェンスにはこうしたアートが施されて、フォトスポットとして大人気です。
2018年TDL新エリア前
2019年TDL新エリア前
一方のTDLですが、2018年の35周年のイベント時から2020年にオープンする新エリアの境界に設置されたフェンスに装飾を施すようになりました。
今や東西のテーマパークの二強施設は、フェンス沿いがフォトスポットとして人気があるという施設になってしまいました。
これと同時に改装が大型化するとクレーンなどの大型重機(キャストの間では“キリン”というそうです)を隠すことも難しくなり、最近はパーク内から工事現場のクレーンが見えているシーンも見られるようになりました。さすがにココまで隠すのはどちらのパークも無理と諦めているのでしょうか?
2009年当時と違って現在は工事している個所に何ができるのか?ゲストはネットやSNSで皆知っています。隠したところでその先にできるものがわかっているのですから、無理に隠さなくてもいいという判断なのでしょうか?
こうした時代ですが、現場をヘルメットをかぶった作業員が歩いているシーンなどは見えない程度の目隠しはしています。昔と違って最近はGOOGLE-EARTHなどで上からの映像も丸見えになってしまう時代ですから、隠すことにも限界があるようです。
2019年3月アナハイムディズニーランドのお城
本家のアメリカのディズニーランドですら、お城の改装の時には足場ががっちり見えてしまう状態ですし、TDLもお城の改装は同様です。
来場者の99%(ほぼ全員)がリピーターであるような施設では、無理してすべてを隠さなくても雰囲気を崩すことはなく、むしろ囲いまでも顧客満足度の道具に利用しようというのが最近の傾向です。
今や工事現場も含めてテーマ性を求められるようになったということでしょうか?ある意味10年前よりもゲストが求めるものはハードルが上がっているようです。これまた「すごい」ことです。