【075】「言葉遣いも日本一」の10年後

 


ここすご2020


この本を出版した当時はTDRは「サービスの大変良い企業」と言われていました。事実2014年まではTDRの企業顧客満足度ランキングでは2009年から2011年までは3連覇。2012年も2位、2013年は一位に返り咲き、2014年は2位。しかし、以降はベストテン落ちしています。(サービス生産性本部「企業顧客満足度調査」より)


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面白いのは2012年以降USJが急速に業績を回復し、2015年以降は一時的とはいえTDLの入場者数を凌駕するような時期が出てきているという点です。

顧客満足度調査において上位にランキングされている企業(団体)を見ると、劇団四季、宝塚歌劇団、ヨドバシカメラなど業界内では圧倒的なシェアを誇っている企業ばかり。これを見ると(この調査における)顧客満足度と業界内のシェアは比例関係を持っているようです。この調査の目的の一つが「日本サービス大賞」の選出で、その選出基準が“革新的で優れたサービス”という点もTDRにとっては不利な条件と言えます。

TDRのサービス体制自体が開業して20年以上が経ち、かなり確立されて“革新的”というよりは“当たり前”のサービスになっているからで、今では最寄り駅の舞浜駅周辺のカフェですらTDRのサービスの中で取り入れているサービスが多々あるくらいです。それまで“唯一で革新的”だったものが恒常化したこともランキングから押し出された理由かもしれません。

一方のUSJはサービス(接客)が独特です。いわゆる「関西ノリ」を前面に出した人懐っこい接客(裏返すと“馴れ馴れしい”となることもあるが・・・)です。働くスタッフが積極的に声をかけてくれるなどTDRよりも上回っているものもあります。承認欲求が強くなった昨今の日本人にとってはこの接客は嬉しい対応に見える人は増えているのではないかと思います。

さて、サービスという面では一時期の勢いがなくなったと評価されたTDRですが、自分はいまだに接客サービス業のお手本として学べるところはたくさんあると思っています。USJよりもこれは勝っているというものの一つが、「混雑がひどくなっても接客体制が落ちない」ことです。

一日に10万人近くのゲストが押し寄せることもあるTDL。一方で閑散時期は2万人程度になることもあります。テーマパークに限らず、街中の飲食店などでも混雑した時間には接客レベルは落ちるものです。これはスタッフ(経営者を含む)が忙しいことで余裕がなくなり、いわゆる“テンパった”状態でゲストの対応をするからです。混雑していないときにはとても接客サービスが良いお店でも、混雑したときにはスタッフから笑顔が消え、ゲストの方に意識がいかなくなる。こんな施設やお店はまだまだ日本中でたくさんあります。


セブンルール 2019年8月11日放送分より
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2019年にTDSにオープンした新アトラクション「SOARING ファンタスティックフライト」の初日は最大待ち時間が300分でした。TDRのアトラクションでここまで待ち時間が長くなったのは久しぶりに見ました。300分(5時間)。ソアリンは定員87人、所要時間は5分、2シアターで174人。1時間で処理できる人数は2088人。これが5時間待ちなので10440人。

一方で受け入れる側は「セブンルール 2019年8月11日放送分」の説明によるとスタッフ数が156人。シフトなど考えて300分待ちの瞬間に現場にいるのは100人と考えればキャスト一人当たりの対応ゲスト数は104人。もし普通の居酒屋さんだったら100人のお客さんを一人で対応するなんてありえません。

こうした尋常ではない人数を一人で受け持ちながらも、いつも通りの接客対応ができることこそがTDRの強みと言えます。さらに言えばそれをやっているの時給払いの準社員(アルバイト)であること。接客力というよりは運営力こそ、いつも見ていて勉強になる点です。


ゲンバビト 2018年4月15日放送分
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こんな風にスタッフを育てるにはどんな仕組みがあるのか?これもまた最近テレビで紹介されました。「ゲンバビト 2018年4月15日放送分」、これを見てわかることはまず最初に覚えることが“ゲストに声をかけること”であるということ。

繁忙時に多人数で押し寄せるゲストに向かっていける意識を付けることを最初に覚えさせています。キャストも人間ですからいきなり多数のゲストが押し寄せることを目にしたら通常の業務もテンパってしまうでしょう。なのでまずはそれを取り除くためにゲストに声をかけて会話をしたり、案内をしたり、ゲストの楽しみを手伝ったりする。
こうしたことから仕事を積みかさねていくとどんな日でもバタつかないキャストが育てられるようです。


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サービス業全体が人材不足という今の日本では出勤初日からいきなり業務で、しかもそれが混雑日。ベテランもテンパっている中で殺伐と仕事を進めて、終わったら「また明日よろしくね」。新人にとっては次の日の出勤が不安になるのではないでしょうか?結局仕事が長続きせずにいつも人手不足という悪循環に陥ります。

本の中では言葉遣いについて書きましたが、わかっていてもついつい間違ってしまうのはやはり心にゆとりがないからで、落ち着いて話をすれば誰でも正しい言葉で接客できます。“落ち着いて対応する”ということを念仏のように唱えるサービス業の指導者は多々いますが、“落ち着いて対応する”スタッフに育てるためのトレーニングをできる人はまだまだ少ないのが現状のようです。

なので自分はTDRで新人を指導中の場面に遭遇するとついつい後をつけてしまうのです・・・。

 

 

 

 


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