【069】もうすぐ再開のTDR、入場者少なくても儲かるのか?(後編)
前回の続きです。
前回は損益分岐点を出してみました。今回は入場者を減らしてしまうとどのくらいの赤字が出るのか?どのくらいの経費節減で赤字を解消できるのか?を勝手に試算してみました。
2020年の運営はどうなるか?
まずは、料金が改定されています。大人が7400円から8200円に引き上げられます。このため入場料単価は間違いなく伸びるはずです。
過去の入場料金の値上げの推移をみると、大人の入場料金8200円になったときは入場料単価は5887円(2019年の7400円のときは5352円)と増加しそうです。
もう一つ、入場料単価が上がると、このほかの単価も変動します。
過去のデータから推計すると物販と飲食は増加、その他(駐車場やレンタル品)は微減しています。
この二つの試算から、料金改定後は以下のような単価になりそうです。単位は円です。
入場料 |
物販 |
飲食 |
他 |
計 |
|
2019年 |
5,352 |
4,122 |
2,341 |
1,619 |
13,434 |
2020年 |
5,887 |
4,543 |
2,442 |
1,464 |
14,336 |
続いて経費の内容、変動費はゲストの多少により金額が変化していくものだから、ゲスト一人が入場するとかかる変動費は
6,694円
一方、固定費はゲストが来ても来なくても一日必要な金額になるので、一日当たりの営業時にかかる経費と考えて年間の固定費を365日で割ると
334,723千円(約3.3億円・・・)
フルスペックの運営したら・・・
ここからはTDLに限って見てみます。
この状態で、1万人の入場者を受け入れる状態で営業を再開して1か月(30日で計算)運営すると、
売上 |
4,300,843 |
変動費 |
2,008,159 |
固定費 |
5,522,956 |
経費合計 |
7,531,115 |
営業利益 |
-3,230,273 |
なんと・・・32億円の赤字・・・一日当たり1億円ずつ赤字になります。入場者を増やせば赤字幅は小さくなり、当たり前ですが損益分岐点売上を達成する入場者数を超えると黒字化します。
経費を節減すると・・・
当たり前ですが1万人しか来ないのに、こんなに経費をかけるはずもなくアトラクションを止めたりするなどの措置が取られるはずで、こうした結果固定費が抑えられていくものと考えます。
固定費を節減して営業利益が0になるのが
売上 |
4,300,843 |
|
変動費 |
2,008,159 |
|
固定費 |
2,292,684 |
41.5% |
経費合計 |
4,300,843 |
|
営業利益 |
0 |
固定費を41.5%に圧縮(つまり6割の経費節減)を実施すれば理論上の赤字にはぎりぎりなりません。
アトラクションで調整すると・・・
固定費圧縮の方策がすべてがアトラクションの休止とも言えないのですが、固定費の細かい内容までは外の人には考えるすべがないのでこの先はアトラクションの休止による固定費節減で考えてみます。
TDLのアトラクションの時間当たりの処理の能力(THRC)の合計は約5万です。つまり1時間に5万人が何らかのアトラクションに乗れるように設計されているということです。
6割削減する必要があるので、5万×(1-0.6)=2万のTHRCがあれば、固定費を削減することができます。1万人の入場者に2万人分のTHRCならかなり乗れる?っと考えるのは危険です。
三密回避のため100%の乗車率は望めるべくもなく、半分がいいところでしょう。
となると・・・なんということでしょう・・・1万人という数字は固定費を節減するうえでもちょうどいい数値になりました。
THRCで2万分のアトラクションを乗車率50%で運行すると考えて、選ばれるアトラクションは何でしょうか?これは「新しい生活様式」に見合わないものを除外していくと残ったものが選ばれるものになりそうです。
- 不特定多数が同じものに触れる可能性があるシューティングライドのような形式はNG
- 換気の観点から10分以上屋内に留まるようなもの
- ソーシャルディスタンスが保てないようなもの
まずはこのくらいでしょうか?
各ランドで最低一つは大型機種を動かすことが必要という観点で考えて、上記の理由に該当するものを除いてみると・・・残るのは・・・
- アドベンチャーランド→ウエスタンリバー鉄道、チキルーム
- ウエスタンランド→ビックサンダーマウンテン、トムソーヤいかだ、蒸気船
- クリッターカントリー →なし
- ファンタジーランド →中央部の小型機種のみ
- トゥーンタウン→ミッキーの家以外
- トゥモローランド→スティッチエンカウンター(これも微妙な感じですが・・・)
これらが稼働すれば、2万5千程度のTHRCは確保できそうです。
稼働率を50%に想定して、1万2千くらいの実質処理人数。
こう考えると、入場口から見て左半分が乗れるアトラクションが多いエリアになるようにも感じます。
新規エリアに関しては当然開園しないでしょう。
新しい生活様式が発表されるよりもずっと前から存在する「すべてのゲストはVIP」という思想から誰もが平等にはいれる状態になってからの開園ということになるのではないでしょうか?
算定してみて感じること
考えてみると10万人が最混雑日に押し寄せる施設なのに、その1割の1万人しか入れなくても赤字にしない方法があるというのが驚きました。
TDRは変動費比率が他のテーマパークに比べて圧倒的に高いからなしえるのだと思います。
1000人規模のイベントがやっとできるようになった昨今で1万人規模の集客を行うというだけでも相当勇気が必要です。
ちなみに変動費が経費中の60%というのは、街中の飲食店舗が目指すような数値です。数値だけで見ると、様々な遊びが楽しめる巨大なレストランという感じです。
また、日当たりの損益分岐点売上を達成する入場者数が2万~3万という数値も興味深いです
勝手な推測ですが、再開後しばらくは入口から見て、左側の方が動いているものが多い印象を受けそうですね。