東京ディズニーリゾートの高齢化問題は本当に起こっているのか?


目次


本当にTDRは高齢化しているのか?

最近、東京ディズニーリゾート(TDR)についての記事を見かけました。

「TDRから若者がいなくなった」

「今のTDRは高齢化が加速している」

現地には今年も昨年も行きましたが、高齢化が進んでいるような雰囲気はあまり感じなかったのですが、これはどういうことなのか?

自分なりの答えを見つけてみようと思い解析してみます。あくまでも一個人の意見なのでその点はご理解ください。

TDRの情報として、決算書FACTBOOKを利用して解析していきます。

まずは、2023年の入場者数と年齢属性、居住地属性をFACTBOOKより引用します。


東京ディズニーリゾーt-の高齢化問題は本当に起こっているのか?


比率のままだと差異を出せないため、入場者数×比率で人数化します。

人数化することで四則演算が可能になります。

この先の計算では、人数化された数値を元に計算していきます。


東京ディズニーリゾーt-の高齢化問題は本当に起こっているのか?


年齢層の実績推移からみる2023年の年齢層比率は?

まずは、年齢層について各年の実績から推計モデルを作ってみます。コロナ禍になってしまった2020年以降は集客制限などがあったりしたので、ゲストが自由に行き来できた時期である2019年までの数値を利用します。

以下は年齢層の推移です。


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最も多いのは18-39歳の層ですが微減ですが減少傾向にあります。同様に12-17歳も減少傾向です。一方で40歳以上は上昇傾向にあります。

2019年までの実績の推移から、2023年になった場合の推計値を算定してみます。


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2019年までの推移を利用した場合、2023年は18-39歳の層が半数を切ります。その一方で増えているのが40歳以上の層で、18-39歳の層を吸い取るような推計結果となりました。

 

居住地域の実績推移からみる2023年の居住地域比率は?

続いて、居住地の推移です。推移を見やすくするためにまずは関東圏の推移です。


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全体の60%以上を占めているのですが、減少傾向にあります。

続いて他の地域です。


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増加傾向にあるのは海外居住者のみで、どれも減少傾向にあります。


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2019年までの実績値を使って推計式を作ると、2023年では関東圏が60%となります。2019年以前も微減する状態では有りましたが減少が最も顕著です。

また、近畿も7%程度であったところが6.4%と減少しています。海外からは13%と伸びが大きくなっています。

 

2019年までの実績からの推計値と2023年の実績値の対比

2023年の入場者数は27,507千人(2750万人)なので、先ほど求めた年齢層や居住地域の比率にかけて推計人数が算定します。これと、2023年の実績値を対比してみます。


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減少している項目は特化されています。

  • 年齢層では、18-39歳の層が推計よりも実績が240万人ほど減少しています。
  • 居住地域では関東が推計値よりも実績値が200万人ほど減少しています。

それぞれをクロス集計してみると以下のようになります。


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減少しているのが関東圏の18-39歳の層に集中しているのがわかります。

2019年までは年間パスポートが利用できました。当然ながら何度も来る人でないと年間パスポートを利用する意味はないので関東圏に利用者が多くなるのは自明です。

よって、年間パスポートを持っていた関東圏の18-39歳の層がごっそり抜けてしまったことが40代比率を増加させたのか?ちょっと結論付けるのは早そうなので、2023年という特性についてもう少し調べてみます。

 

周年催事が年齢層や居住地域に与える影響はあるか?

2023年の集客を考える際に、加味しておかないといけないことが40周年催事の期間だったということです。

TDRに限らず、テーマパークの周年催事は顧客の増加を促します。


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20周年以降、5年ごとに周年催事がありますが、どの年も前年に比べて大きく集客を伸ばしています。

どのくらい伸びるのか?顧客の属性別にも計算してみると以下の通りになります。


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周年催事時期になると、40歳以上の層が最も増える傾向があります。居住地別では関東圏以外の地域からの集客が増える傾向があります。

周年催事は前年比で10%程度の増客で、40歳以上のゲスト、関東以外の中長距離圏ゲストを増客させる効果があるようです。


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「もし2023年が周年時期でなかったら」という仮定をして推計を比較してみます。過去の実績から周年催事により109.5%増客しているので、2023年の増客分を109.5%で割れば周年催事効果を除去できます(5418千人÷109.5%=4894千人)。

不思議なことに、周年催事を行うことで関東からのゲストが減少、特に18-39歳の層が大きく減少します。

前年差異を推計値と実績値で比較する

前年差異の5418千人を推計値と実績値で比較すると以下の通りになります。


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18-39歳は全国で減少が発生しています。

 

2019年までの推移との差異から40周年効果を抜くとコロナ禍前との差がわかる

2019年までの推移からの推計値と、2023年の実績値の差異から、40周年催事の効果分の差異を差し引いて、周年効果を除去したTDRの2019年までの推移からの推計と実績の差異を算出します。


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やはり、40歳以上は大きく入場者数を増やし、18-39歳は関東圏を中心に大きく入場者数を減らす結果になりました。

18-39歳の層はなぜ減るのか?

TDRにおける18-39歳の入場者数と、入場者数比率の2003年以降推移を以下に示します。


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人数は入場者数が増えている時期もあり増減していますが、比率に関しては2019年まで減少傾向にありました。

18-39歳(≒20-39歳)の関東圏人口の推移

関東圏(茨城県、群馬県、栃木県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県)の20-39歳は以下のように推移しています。
※政府統計では18歳からの区分がないので、20-39歳で以下検証します。


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見て分かるように2003年当時は1240万人程度でしたが、2023年には1000万人程度に減少しています。

 

吸引率から関東圏で何人が行こうとするか算定する

この人口のうちTDRに行く(行こうと思う)人の比率を「吸引率」と言います。中小規模のテーマパークでは車で2時間(距離で60キロ~100キロ)程度の範囲が施設に来る可能性がある商圏で、この中の人口の10%程度がテーマパークへの来訪者となることが多く、吸引率は10%と考える場合が多くあります。

一方でTDRはすでに全国規模の施設になっているので、全国から10%の吸引率があると考えても良いかと思います。


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但し、距離が遠ければ吸引率は落ち、距離が近ければ吸引率は上がります。この上下の度合いは正規分布に従うと設定します。


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正規分布に従うと吸引率が高くなる関東圏は20.4%になります。


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各年の20-39歳の人口に対して20.4%の吸引率ですから、TDRに200万人~250万人のゲスト(以降「想起ゲスト」と呼称します)が向かうと考えます。

入場者数は2019年までは900万人~1000万人なので、平均で年3回~5回リピートしているということになります。
これが、コロナ禍以降3回未満と大きく減っています。

コロナ禍以降は年間パスポートの廃止やコロナ禍中の入場者数制限などがあったので、リピート回数が減少することは自明なのですが、2023年のように特に制限がない時期に戻ってもリピート回数が2022年を下回っているという結果になりました。

入場料金の急速な値上がりが影響している可能性もあります。

年間パスポートの利用者を抜いたリピート回数


以前このブログで計算したことがあります
が、年間パスポートが使える場合と使えない場合での客単価は以下の通りになります。



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この差異が大きければ年間パスポートの利用率が高くなります。

※本来は団体比率の影響もありますが、計測できないのでここでは年間パスポートの影響に特化します。

客単価の差異から算出した年間パスポートの利用率は以下の通りになります。


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年間パスポートが利用できた時代でも、年間パスポートの利用率は減少傾向にありました。

理由はTDRの年間パスポートが他の施設よりも異常に高いからではないでしょうか?

他の施設では5回以内で元が取れますが、TDRはTDLとTDSの両方使えるものは年間で13回以上行かないと元が取れません。


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そこで、年間パスポートの利用者は全て元が取れる13回リピートすると考えると、年間パスポートを購入した人の人数がわかります。

これを差し引いた残りの想起ゲストが年間何回リピートするのか?を以下に示します。


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年間パスポートの利用者数を差し引いても、2019年ごろまでは3回以上は来ていました。

しかし2023年は2.9回と3回を切っています。

 

若者離れといわれる本当の原因は?

想起ゲストがTDRに行かなくなったというよりは、リピート回数がコロナ禍前よりも減少したことが原因と自分は考えています。

こうなった原因は料金の大幅な値上げにあると考えています。

2011年以降のチケット料金(大人)とリピート回数と、想起ゲストが年間で支出する入場料金合計の推移を以下に示します。


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3万円が壁のようになっているように感じます。

つまり「18-39歳の年齢層はTDRへの支出は3万円以下」という意識があるのではないでしょうか?

「このため料金が高くなれば、当然リピート回数が減少する。」

これが18-39歳の入場者数が減少した最大の理由だと考えています。

行こうと思っている人が減少したのではなく、行こうと思っている人がリピートする回数が減少したことで入場者数が減少したというのが自分の結論です。

 

コスパとタイパの波に煽られるTDR?

ここまでは数値を元にした集計結果なので、最近のTDRの情報を聞いて行くのが嫌になった人やUSJに魅力を感じて移ってしまった人は少なからず存在すると思います。数値からはこの点は算定できないので、一つの考え方として捉えてもらいたいと思います。

さて昨今、特に18-39歳の層で重視されるコスパ(Cost Performance)とタイパ(Time performance)にTDRが翻弄されているようにも感じます。この点についても記載しておきます。

コスパ(Cost Performance)に合わない?

コスパの考え方を重視すれば、TDRに行ってできるだけ多種類の体験(experience)を享受したいと考えるものですが、ディズニーの世界観で統一されていることもあって、ディズニー関連以外のものはTDRにはありません。美女と野獣のエリアなどもできましたが、ほとんどは築30年以上のアトラクション、またショーに至っては抽選制で確約できない、パレードの良い場所は常連で来ている人達にいつも取られている・・・。せっかく高いお金を払っても自分が思ったようなコスパが得られない。というゲストは増えているのではないでしょうか?

USJのように様々なコンテンツがあって、ショーなどは時間までに行けばちゃんと見られる。ショーやパレードは参加型を強く意識しているのでどの場所からも楽しめる・・・など。TDRに比べるとコスパが良く見えます。

2023年の年間集客数はUSJがTDLを上回りました。同じ入場料金でより多くの体験ができるという意味ではコスパはUSJの方が良いのかもしれません。

これまでTDRに使っていた支出をUSJに振り向けるところまで行きついてしまったら、TDRの値上げ施策は大外れということになってしまいますね。

タイパ(Time Performance)がマナーを悪くする

今まで年4回行っていた人が、3回もしくは2回しか行かなくなれば、行ったときに依然と同じように楽しむには、効率よく回らなければなりません。

効率を求めすぎると周りの人の動きを気に掛けることができなくなり、割り込んだり、場所を占拠したりというマナーの悪化が発生するのは自明です。

SNSなどで若者のマナー違反などを散見しますが、民度が低いわけではなくて、タイパ(≒効率)を重視しすぎた結果なのではないでしょうか?これを引き起こすのが、料金の急速な値上げです。今まで3回以上行けたのに、2回しか行けなくなったら、1回当たりに詰め込む量を増やすしかない訳で、この結果マナーに反する行為をしてしまうというのが実情ではないでしょうか?

 

いつの間にか、USJの真似をし始めてしまったTDR

自分は最近のTDRに対しての風向きの悪さの真因はこれだと思っています。

USJには入場料金の他に、確約チケット(EXPRESS-PASS)があります。USJがこの制度を使って悪評があまり出ないのは、確約チケットの対象になっているものの多くが期間限定のコンテンツだからです。確約チケットでもUSJ内の常設アトラクションの確約チケットは高額料金のおまけのように付いてきます。ゲスト狙いはあくまでも期間限定コンテンツです。今しか利用できないという心理が購入価格に対する不満を打ち消せるのです。

一方、TDRは期間限定でコンテンツが入れ替わることはほぼありません。常に常設です。ここに確約チケット(Premier-Access)があると、チケット料金の二重取りのように見えます。常設施設だけで勝負するのであれば、Fast-Passレベルで止めておけばよかったのでは?行く度にいつも思います。

今まで「きれいな芝を他人に見せていた」のに、最近は「他人のきれいな芝を見て羨ましくなってしまった」ように感じます。
TDRはこの先どこに向かうのか?単なるゲストとして見守りたいと思います。

 

 


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