【080】「お客様を長く滞留させるようなスケジュールが組まれている」の10年後

 


ここすご2020


この本を出版したときにはこの章ではショーを時間ごとに見ることで滞留時間を稼げるようになっているという話を書きました。
TDLでショーの会場として利用されている主なものは「シアターオリンズ」と「ショーベース」の二カ所。ここで行われているショーは2020年現在では抽選による座席指定制度が導入されています。

2009年当時はショーの観覧は早い者勝ち。アトラクションにはファストパスがありますが、ショーに関してはそうした時間の優遇施策はありません。よってショーの見るためには1時間以上並ばないと見れないなんてこともざらでした。

2009年と2019年のショーのスケジュールを比較してみるとショーの実施時間などはいくつか変化が見られます。


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2009年1月で見るとシアターオリンズのショーが12時台、14時台、16時台であるのに対して、ショーベースは初回こそ11時50分(ほぼほぼ12時台)、以降は13時台、15時台、17時台。一時間ずつずれているようなスケジュールが組まれている日もあります。ショーは大体30分以内で終わるので、満席にならなければ連続で見ることも理論上は可能でした。また、シアターオリンズのショーは基本回数が一日4回であるのに対して、ショーベースは5回が基本でした。


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これが、シアターオリンズは11時台、12時台、14時台、16時台、17時台の一日5回。ショーベースは11時台、13時台、14時台、16時台、18時台の5回と回数は同じになりました。
さらに、時間も重なるところが多くあり、連続で見ることは困難になりました。

こうした背景にあるのは、ショーの鑑賞が抽選制になったことがあります。2013年(30周年)のころからでしょうか?ショーの鑑賞は抽選制になりチケットを使って抽選し当選者が指定時間に着席できるというタイプになりました。2018年(35周年)からはアプリを使った抽選制も導入されています。
以前のように“時間と引き換えれば必ず見れる”というものではなくなりました。

この本が出版された2009年はまだ日本にはスマホは普及していませんでした。総務省の情報統計白書によれば、2009年は携帯電話(ガラケー)の普及率は96.3%ですがスマホはなく、2010年になってスマホが7.2%の普及率です


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「一部のマニアの人がグループを作ってショーを何度もリピートしてみるから」という話も聞いたことがありますが、“全てのゲストはVIP”の理念のもと鑑賞機会を均等にするというのが運営側の考えではないかと思います。

スケジュール的には2時間のサイクルでどちらかのショーは見れるようになっているので、2009年に書いた滞留時間を伸ばすようなスケジュールは2020年現在でも組まれていますが、抽選という関門を突破しないとこれもかないません。

アトラクションのファストパスは従来の通り早い者勝ちなので早く行けば必ず手に入りますが、ショーに関しては日頃の行いと時の運ということになります。



ともすれば利用機会を失い退園の機会を作ってしまいそうなショーの抽選制度が導入されているにもかかわらず、滞留時間は2009年よりも2019年が伸びている理由は何か?ここ実は気になります。

自分は“外の人”なので、ここから先はいくつか仮説を立てて一番当てはまりそうなものを紹介するしかできませんが検証してみます。
考えられる仮説としては以下のようなものがあります。
① ショー目当てではないゲストが増えた
② 抽選に当たりやすい日などの情報をもとに従来の閑散日に来る人が増えた
③ 料金の値上げで元を取るために長くいるようになった

まずは①の仮設。これに該当しそうなのは海外からの観光客のようなTDLビギナーです。色々調べてくるでしょうが、まずはアトラクションに乗り、ターキーレッグを食べて、ポップコーンのバケットを買って園内を散策し、パレードでキャラクターに手を振るというような楽しみ方をする人。
外国人客は2009年814千人→2019年3126千人(約4倍)。同じ対比で関東からの客は1.1倍、国内で最も伸びている西日本で1.4倍。2019年の数値では全ゲスト数の10%弱ですが、伸び率は国内ゲストの3倍以上。海外から来る人は多少お金がかかっても経験できるものは何でも経験したいという心理もあるので長く滞在してくれそうです。

続いて②の仮設。これは外の人には検証仕様がありませんが報道などで見るゲストの意見は「今まで混んでいない日でも混んできた」という意見もあるようです。


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最後に③の仮設。これはゲスト心理の話でしょうが、日本人の多くの人は「せっかく高いお金を払ったんだから元取るぞ」と考えるのではないでしょうか?
2009年の大人入場料金は5800円で滞留時間は8.4時間。1時間当たりの償却額は690円です。2019年の入場料金は7400円(※10月より消費増税で7500円となりましたが、条件を同じにするため増税前の価格で検証します)。1時間で690円ずつ償却していくと仮定すると10.7時間いないと元が取れません。10年前から来ているリピーターの人にはこうした心理も働くのではないでしょうか?

アトラクションはファストパス、ショーは抽選制など従来の設備ではすべての楽しめない人が出てきた中で、滞留時間と顧客満足を両立させるための手法に寄与しているものはなにか?2009年以降に増えているように思うものを列記してみる
・ファンカストの登場
・アトモスフィア(ストリートパフォーマンス)のキャラクター化
・プロジェクションマッピング
・隠れミッキー探し
・SNS映え狙い
ファンカストやアトモスフィアは実施時間の発表はないので“(自分だけ)なんとしても見たい”という滞在の長期化要因といえるし、“隠れミッキー”などを含めてそこで撮った映像や画像はゲストの知り合い(フォロワー)の来場動機になりえるし、プロジェクションマッピングのような夜のイベントは当然滞留時間の引き延ばす要因になりうる。

こう考えるとTDLに長くいる人は「自分は良い体験をできた」と思えるような園内の施策を探して巡り合うことを楽しみに来ている、そういう人が増えてきているように感じます。

今やTDLは施設が与えたもので楽しむのではなくて、ゲストが自分でレアなものを探しSNSを通して承認欲求を満たす。「こんな楽しみ方を自分が知っている」というのがこれからの楽しみ方になっているのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 


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