【079】「ガイドマップでわかる嗜好の違い」の10年後

 


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日本にスマホが普及し始めたのは2009年以降。ちょうどこの本が出版されたころからでした。翌年の2010年に統計が出始めて最初は10%にも満たなかったものが、たったの10年で75%、つまり4人に3人はスマホユーザーということになります。

こうした動きに合わせてでしょうか?今ではTDRもUSJがスマホ用のアプリが導入されています。園内にいるときにどのアトラクションが何分待つか?次のショーが何時から始まるか?一目で確認できるのはとてもありがたいです。以前は利用するものの入口で確認するか、園内に何カ所かあるインフォメーションで確認するしかなかったのですから大変便利になりました。

さて、スマホで必要な情報がすぐに取れる時代になったのですが、ガイドマップはなくなるような雰囲気が全くありません。パーク内の最新の情報が見れるようになっているのに今さら紙の冊子を作らなくてもいいのではないか?そんな話を聞いたことがあります。

しかし、2009年以降にどちらもパークに行ってもやはりガイドマップの需要は大変多いです。さらに、ガイドマップも従来の日本語と英語の2本立てから、今や中国(しかも簡体、繁体の二種類)、韓国語、タイ語、インドネシア語など多岐にわたってきました。


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不思議なこと日本よりも物事を合理的に考えるフランスのディズニーランドパークでもガイドマップは立派なものがあり、言語もフランス語以外、英語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ロシア語など多数あります。もちろんパリにも公式アプリはあります。

便利な情報が手元ですぐ見れるのに、なぜガイドマップが必要か?やはり気になります。

ここからはゲスト視点(というかゲスト心理)で考察してみますが、理論的な検証ができるようなものではありませんので、一つの意見ととしてお読みください。

アプリと同じような情報が載っているガイドマップを取ってしまう心理。一つにはもらえる数少ないアイテムであるということです。テーマパークは入場料から始まり何かを手に入れる、体験するためには費用が発生します。その意味で“ただ”のものは魅力的です。

もう一つはスマホという機器の特性です。公式アプリを見る以外にもスマホはいろんな場面で利用されます。カメラ、ビデオ、メール、SNS、WEB・・・。園内にいても利用する頻度が高く、これを公式アプリが寡占したらすぐに“バッテリー切れ”という災いを引き起こします。「スマホを利用していて困ったことのランキング」でも上位に出てくるのがバッテリー切れ。しかもテーマパークにいるときにこんなことになったら悲劇です。ここから先スマホでの撮影や録画や発信を諦めるか、モバイルバッテリーにつないで急速充電しながら使うか(大抵はこちらです)。面倒くさいことが発生します。ファストパスの確保やチケット提示などスマホでやらなければならないことができなかったら残念のレベルではすみません。

施設側にとってみればゲストが撮影して発信してくれるパークでの遊び方がバッテリー切れにより減少してしまうのは施設の営業的な観点からはとてもマイナスです。

こう考えると、パーク内でゲストの確認頻度が高いものなどをまとめたガイドマップを持っていてスマホのバッテリーの減少を抑える手立てがあった方が安心してパーク内で遊べるということになります。

現代はSNS社会、“承認欲求”の時代でもあります。アプリの便利さよりも「いいね」を貰えることの方が優先される時代です。なので、パーク内でこの活動を阻害してしまうようなアプリの使い方を奨励するような施設になると、いずれゲストが離れていきます。

スマホはゲストのものであり、アプリの利用よりも優先したいことをゲストはたくさん持っているという認識に立てば、これだけスマホ全盛の時代でも紙媒体のガイドマップも重要な役割を持っていることが浮かんできます。


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施設にとって紙媒体とアプリを比較した場合にデメリットは他にもあります。最たるものはやはりコストです。いくら安価に抑えても紙はコストがかかります。ここはさすがのTDRと言えども節約の方向に走っています。2000年代に入る前はTDLも見開きのガイドマップでしたが、2001年にUSJがオープンし、USJが細かい情報をガイドマップに載せて、見開き型から冊子型に変わったあたりからTDLのガイドマップも冊子型になりました。


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そして2008年(25周年)ごろから再び見開き型に戻っています。そして今ではガイドマップのあちこちにQRコードが付いて詳しい情報を引き出せるような仕組みを付けています。限られた紙面内にゲストにとって必要な情報を盛り込んだうえで、それ以上の情報を求める場合にはWEBへ誘導というのが現代のスタイルです。

「スマホで見れるから紙は要らない」、「コストのかかる紙はやめよう」とコストばかりを重視すると結果として顧客満足が得られなくなってしまうことを利益が出ているテーマパークは知ってるということです。

 

 

 

 

 


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