【073】見るだけで参加はできないパレード

 


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パレードと限定するわけではないのですが、テーマパークではエンターテインメントの一環としてショーやパレードを実施するところが多いです。日本の場合比較的どこの施設でもパレードやショーは盛況です。これは日本人が日頃盆踊りとか地域の祭りなどみんなで集まって踊ることに慣れていることが大きな要因ではないか?と自分は思っています。

最近実施方法に大きな変化が出てきているように思うのがパレードです。パレードといえば日本ではTDRがその発祥のように言われていますが、記録を見ると幾つかの施設でTDRよりも前からパレードが行われているようです。ただし、パレードを見たさに人が集まるような品質で実施し始めたのはやはりTDRでしょう。


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以前はパレードというと大きなフロートに乗ったキャラクターやダンサーさんが愛想振りまきながら通過していくというスタイルでしたが、昨今は途中で停まったり、停まらなくても周囲のスタッフを煽ってゲストに参加を促すようなシーンが増えてきました。特に昼間に実施するパレードはこうした「ゲスト参加型」へ移行するものが多くなってきています。TDRがそうした方向に進めば他の施設は“右へならえ”という感じで全国のパレードがあるテーマパークでは最近のパレードはゲスト参加型がほとんどです。

一方で、中国はというと未だに“見るだけパレード”が主流です。日本のレベルで実施している参加型のパレードはほとんど見ません。


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こうしたパレードやショーを製作する人を見てみるとその原因がよくわかります。製作者のキャリアが舞台などの演劇製作の出身だったりする場合が実に多いのです。

舞台での演劇は対価を取ってゲストに見せるためのものですからゲスト参加は主眼に置きません。仮にあったとしても全体の演出の中で重きを置く部分ではなく次のシーンへのつなぎ的な存在でしょう。舞台での演劇はこれで良いのです。演劇そのものの筋書きに共鳴してゲストを集めるので無理にゲストに媚びる必要はありません。

しかし、テーマパークではそうはいきません。テーマパークにおけるパレードの本来の役割は、ゲストをアトラクションや店舗などから引きずり出すことです。これにより機械の調整を行ったり、商品の補充を行ったり、スタッフの休憩を回したりすることに使います。パレード中はできるだけ多くのゲストがパレードに集中してもらって店舗やアトラクションのエリアに来てほしくないのです。

ここで問題になるのがパレードの内容です。パレードというものに慣れていない時代は見るものの珍しさから“見るだけパレード”でも十分に当初の目標は達成できました。しかし、だんだんゲストの目が肥えてくるとそうはいきません。ましてやリピーターとなると「以前みたからもういい」という判断からパレードそのものに関心を持たなくなったりします。そんな背景があると思うのですが、パレードにゲストが参加できるようにしたもので参加する間は確実にパレードに釘付けにしておくものが増えてきているのではないでしょうか?見ているその場や、パレードルート内に入ってショースタッフと一緒に踊ったりするという体験はアトラクションや店舗では味わないものです。さらに見る場所が違えば一緒に踊るスタッフも違うし、カメラやビデオで記録しても毎回違うものができるので飽きることがありません。こうしてパレードエリアにビギナーファンもコアファンもまとめて釘付けておくことができるわけです。


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残念ながら演劇製作などしか知らない製作者はこの点に配慮ができません。パレードの利用方法についての知識がないから仕方ないのですが、どんな施設でも出来上がったパレードを見ると大抵は見るだけで終わります。

見るだけでも魅力があればいいのですが、多くの場合パレードを最後まで見る人がほとんどいないという悲しいパレードができてしまいます。

そしてもう一つ致命的なことがあります。パレードはルートを移動しながら実施するのだということです。舞台となる違って常に進行方向に進まなければなりません。パレードといえども最初は部屋で振付などを練習しますが部屋ではできても屋外で前に進みながらとなると練習だけではうまくなりません。移動が前提になっている振付やステップが求められます。


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これがうまくできていないパレードは見ていてすぐにわかります。パレードのダンサーやフロートの間隔が最初と最後で全く違うようになり、フロートが詰まって停止したり、ダンサーとフロートの間隔が変に伸びたりします。

高尚なキャリアを持ったショー製作者がいるのにパレードやショーの人気が出ない。と嘆く幹部の方がよくいますが原因は製作者にあったりすることがほとんどです。

「ゲスト参加シーンを作ればもう少しよくなると思うのですが」と提案するとダンサーがゲストの子供を呼び込んで輪になって回るだけだったりと極端に簡単なダンスになってしまったりすることもあります。これもダメです。


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ゲストはダンサーとの一体感を求めているのです。

ダンサーが踊る振付と同じものをやりたいのです。ゲスト参加のシーンのダンスが子供だましなものでは逆効果です。
テーマパークのパレードって意外に奥が深くて製作するのは難しいことがご理解いただけると思います。

 

 

 

 

 


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