【065】中小遊園地で売上増加策を講じるために検討すべきこと(飲食編 2/2)
前回に続いて、今回も飲食施設についてのお話です。
喫食率の変化から店舗の収容能力の限界を見つける
ここからは喫食率に注目してみます。先ほども見ましたが、入場者数との相関を見てみると近似曲線はほぼ一定の数値です。
実際にこの検証を行う際には、各店舗単位で実施する必要があります。
二つの店舗で別々に出してみると、入場者数の増え方に応じて実績の分布に特徴が出てきます。グラフ中の赤点線がグラフの上部で推移するほど混雑にも強い店舗といえます。店舗単位で見ると来場者が何人程度で収容能力の限界が来るのかを見ることができます。
両店舗とも一定の入場者数を超えると急速に喫食率が落ちる日が出てきています(赤点線)。これは収容能力が限界を超えてしまっていることが原因です。喫食のための待ち時間が発生することでゲストが店舗の利用を避けるというチャンスロスの発生が認められます。着席して飲食する店舗はどうしてもこの影響を避けることができません。
幸いにして両店舗とも収容能力の限界を超える日はそう多くはありません。もしグラフの点が密集しているところでこうした現象がみられるようなときには早急に対策を講じることが必要です。
この検証は“with CORONA”時代のこれからは重要です。店舗が屋内であれば従来のような席数の確保ができなくなる可能性があるからです。そうした対応を取った場合、入場者数がどのくらいの数値まで耐えられるのかという検証を行っておく必要があります。
滞留時間と実質単価の関係
長くいれば喫食の機会も増えて実質単価も伸びるようになると思うのですが、サンプルの施設のデータではその傾向が見えません。
また滞留時間が長いからといって喫食率が上がることもありません。これは滞留時間が飲食施設の利用以外に使われている時間が長いことを示します。
アトラクションに乗る、ショーを見る。これらを待つなど待ち時間が伸びることが滞留時間を伸ばしていることも推測されます。
この曲線を右肩上がりに向けるためには何が必要なのか?アトラクションの出口に店舗を増やすという選択肢もありますが、巨大な投資が必要になり現実的ではありません。一方ワゴンなどの仮設店舗を増やしたらどうなるか?グラフ中にオレンジで網掛けした部分などを集中的に選んでアトラクションやショーの直前直後に飲料やスナック類を売ることで喫食率を稼ぐことができます。
欧米のディズニーランドではこうした仕掛けが多用されています。混雑してくると突然現れる小さなワゴンなどで対応します。
ワゴンなどの仮設店舗での販売は、滞留時間が長い(∝入場者が多い)ときに待ち時間を利用して食べられるものなどを売ると効率が良いのです。
こうした販売のタイミングをこのようなグラフから知ることができます。
もう一つ見ておきたいのが、滞留時間を横に取ったグラフで見ておきたいのが、実質単価との相関です。
喫食率は下がる傾向があったのですが、実質単価は増加しています。
喫食率が下がり、実質単価が上がるという状況は、自販機などの利用が滞留時間の増加で増えることが要因の一つとして考えられます。
実際には滞留時間が伸びると喫食率が減る傾向があるため、それを補完して売上を伸ばしているのは自販機類である可能性はこのグラフを見る限り高いです。つまり自販機で売られているようなものであれば需要はあるということになります。
飲食店舗の時間消費
「混雑して席も埋まって、なかなか食事にありつけない」というのが繁忙時期。ここは仮設店舗で対応しましょうという話に終始してきましたが、空いている時間はどうなっているのでしょうか?
物販のときと同じように時間当たりの消費単価から推計してみます。
サンプルの施設における時間当たりの飲食消費単価は以下のグラフの通りです。
これを滞留時間ごとに推計実質単価にしてみると
2.5時間がピークになっていますが、おおむね2~3時間あたりがピークです。2.5時間くらい滞在する人は飲食費を1000円弱使っています。
推計値ですから、当然もっと使う人もいれば、もっと少ない人もいます。しかし平均すると1000円くらい使う可能性が非常に高いです。
物販は1600円くらいでしたので、飲食は2/3ということになります。この数値が妥当なものかどうかは施設の商圏内の飲食店舗の価格帯などと比較してみる必要があります。全国の遊園地やテーマパークの飲食店舗の単価としては高くはありません。
中小の遊園地やテーマパークが取り組むべき飲食商品とは?
自販機で売られているような商品をもっと高付加価値にすることで自販機の商品需要を補うことができます。
TDR、USJなど巨大なテーマパークでは、自販機が少ない代わりにこうしたテイクアウト商品が充実しています。ポップコーンなどが引き合いに出ることが多いのですが、ドリンク類などに少し果肉を加えたり、アイスもカップに入れてちょっとフルーツを添えたり、小さな見栄えアップを意識した商品がたくさんあります。
TDRを筆頭にした巨大なテーマパークを参考にするとポップコーンやチュロスなどの商品ばかりを参考にしたがりますが、中小の遊園地やテーマパークでまねするべきは、普通のドリンクやアイスなどをトッピングしたテイクアウト商品の方が参考にすべきだと思います。なぜならより高単価にできるからです。サンリオピューロランドの復活がこうした商品の開発が一助になっているという話は有名です。
地方の施設で地元の名産の果物などがあるのであれば、メニューに取り込めば宣伝効果も期待できます。
席の収容能力は建物の規模により増加させることに限界があります。まして“withCORONA”の時代には席の間隔や店舗内の密集度も気にしなくてはなりません。さらに主食としてメニューにしても高価な原材料を使って作ることは遊園地やテーマパークの飲食としては限界があります。
一方で、今まで販売しているものをちょっと工夫する(見栄えをアップする)ことで、販売できれば単価も従来の商品より高く取れるし、販売数を伸ばすチャンスがあります。座席がなくても食べられるようにしておけば収容能力がない店舗での対応できます。
TDRにしてもUSJにしても、こうしたテイクアウト商品は食欲の渇望からで買うのではなくて、それを買って食している自分をSNSで見せるために買うのです。つまり食欲ではなく自己顕示欲であり承認欲求から買うのです。
元々ラムネ味のフローズンシェイクに、アイスとオレンジシャーベットをトッピングした例
ブルーハワイ味のかき氷にラズベリーとクリームをトッピングした例
どちらもベースになるフローズンシェイクやかき氷は販売されているところが多いが、トッピングによる単価アップを図っているところは少ないのが現状です。
TDR、USJなど巨大なテーマパークでは最近はこうしたスタンドフード(歩きながらでも食べられる商品)を期間催事中の飲食の目玉としてガイドマップなどに掲載することが増えています。こうした取り組みは中小の遊園地やテーマパークでもぜひ取り組んでいただきたいと思いますし、こうした商品が出てくるタイミングで来訪して調べることも必要かともいます。
これからの季節、自分のような人間にとっては飲みたくなるのが冷たいビール。こうしたものもアメリカの施設ではちょっと工夫しています。
ビールに緑のリキュールを加えたもの。普通の生ビールよりも2$(=200円ほど)高く売られています。
“withCORONA”より前に到来していた“SNSの時代”は味よりも見栄えです(もちろん極端にまずいものは論外ですが・・・)。
終わり